組織における多様性と業績の関係については様々な研究があります。

たとえば、506社を対象とした分析によると、人種あるいは性別が多様な企業ほど、売上高、顧客数、利益が多いことが明らかになっています。(C. Herring 2009)

また、経営チームの学歴と職歴がより多様な企業のほうが、革新的な製品を生み出しているという研究もあります。(K. Talke、S. Salomo、A. Kock 2011)

女性役員数の増加が業績を向上させる効果があることが一部の企業ですが認められ、さらに、社外役員の専門性の多様化が業績を向上させる効果があることが明らかにした研究もあります。(新倉、瀬古 2017)

 

しかし、言うまでもありませんが、性別やバックグラウンドに多様性があれば必ず高い成果が上がるわけではありません。

また、多様性のある組織には異なる視点が内在する可能性が高く、その扱いを誤ると成果が出るどころか活動を阻害しかねません。

日本人は、異なる視点が明らかになると、調和を重視して差異に目をつぶることが多いように思います。

それではせっかくの多様性が生かされません。

差異から何かを得るためには、それに向き合う必要があるのです。

 

K. Phillipsらの研究(2008)によれば、意思決定において、多様性のあるグループが同質なグループより優秀な理由として考えられるのは、前者が情報をより注意深く処理するためだと結論づけています。

多様性により、よい緊張感が生まれ、それが情報の扱いを丁寧にすると言っていいでしょう。

 

多様性から多くの果実を得るのに妙案はありません。

皆が多様性を受容する強い意識(インクルージョン)を持つことが出発点であり、多様性によって生じる対立や違和感に真摯に向き合うことが、創造性と深い思考を促す重要な誘因になるのです。

 

我々は、少ない労力で得られる一時の心地よさを求めてしまいがちで、そこに気づかずに、そこから逃れられないことが多いことを忘れずにいたいものです。