ある船長と船乗りたちの話しです。



荒くれ者で、近眼のうえに少し耳が遠い船長がいました。

船長は船の進路を決める時、いつも船乗りたちと多数決で決めていました。

実はこの船には、星を見て船の位置を割り出すことにかけては達人の航海士が乗っていましたが、引っ込み思案で、あまり皆から支持されていませんでした。

ある日、進路を見失ってパニックに陥った船長と船乗りたちは、多数決の結果、いちばんカリスマ性があって能弁な乗組員の主張に従って進路をとりました。

その有能ではあるけれど引っ込み思案な航海士の意見は相手にされませんでした。

結局、船は陸地にはたどりつけず、全員が飢え死にしてしまったのです。



いかがでしょうか。

人には得意分野があってそれを周りの者が認めることの重要性、カリスマ性や能弁の魔力に潜む危険性、多数決の危うさなどを考えさせられます。

日頃から慎重な思考と行動を心がけることが求められますが、“言うは易し、行うは難し”で、慎重に過ごすのは案外難しいものです。

危機の時などはなおさらで誰かにすがりつきたくも、多数の意見に頼りたくもなります。



脳科学で言われているのは、意識と無意識には大きな隔たりがあって、我々は通常意識下で思考し、行動していると思い込んでおり、無意識下での思考や行動にはほとんど気づいていません(無意識ですから当たり前ですが)。

しかし、無意識下での脳活動は意識下でのそれと比べると、どうやら膨大なものであるということです。

なんとなく違和感を覚えるというのは、そういった無意識下の脳からのメッセージです。



この船長のストーリー、カリスマ性や能弁に対して違和感はありませんでしたか?

何か感じるものがあれば、それが正しい選択につながることを教えてくれています。