一般的にダメ出しを受けると、むかつく、開き直る、自信を失うなど、まずネガティブな感情が生まれることが多いと思いますが、そのままで終わらせずに上手く活かせた経験を誰もが持っているのではないでしょうか。活かせるのはどういう場合か、それは自己効力感が鍵となります。
自己効力感とは、未経験のことに対しても自分はできると一定の自信をもって臨める状態で、成功体験を積むことで獲得できる成長には欠かせない観念です。自己効力感があれば、ダメ出しを次のステップへのばねにでき、ない場合は落ち込み、なかなか前へ進めません。そういった可能性が高いことが数々の実証研究で明らかになっています。言われてみればなるほどですね。
しかし、相手の状況を省みず、なぜこんなこともできないんだ、と直球でダメ出しをしてしまったことが少なからずあるのではないでしょうか。自己効力感の有無を確認してダメ出ししたいものですが、“できるか”などと直球で聞いても、たいがい“できます”と答えますから直球の質問は避けたほうが無難です。上司から聞かれて、“できません”とはなかなか言えませんよね、普通。また、自己効力感のようなとらえ所が難しい観念は、聞いてわかるという類のものではないとも言えます。
よく言われる2・6・2の法則に従えば、上の2にはどんどんダメ出しする。真ん中の6はケースバイケース、下の2にはダメ出し禁止といった考えもあるでしょうが、仕事ができるからといって、自己効力感があるかというとそうではないケースもあります。そもそも2・6・2なども怪しい概念ですし。
ではどうしたら自己効力感を確認できるのでしょうか。
結論からいえば、日頃から自己効力感を育む努力を怠らず、部下を観察することで判断するしかないのですが、先のできます部下のような状況もありますから、時々質問をすることがポイントだと思います。シンプルに、“なぜそう考えるのか”あるいは、“どう考えるか”と聞きます。仕事の成果が期待通りかそれ以上で、地に足がついた感じで答えてくれば自己効力感があるといってよいでしょう。
小さなことでもいいので成功体験を積ませ、それを認めて共に振り返りながら(質問をして)持論化させる。このことで部下は自己効力感の階段を一歩一歩上っていきます。このプロセスを部下の心の状態を感じながら丁寧に行う。マネジメントは論理だけではなく、感じる力が重要である一つの所以です。
