講談について教えてくださり、「相棒24」へのエキストラ出演の機会まで作ってくださった神田鯉風先生と、鯉風先生とは長いお付合いという旭堂南海さんが「二人会」をされると知り、上野広小路亭まで足を伸ばした。



開口一番は神田松樹さんの「寛永宮本武蔵伝」


剣豪、宮本武蔵が武者修行の途中、一人の駕籠屋と共に箱根山中で野宿する羽目になる。そこに現れた一匹の狼を武蔵が本能的に斬り捨ててしまうが、それを知った仲間の狼たちが集団で復讐にやってくる。しかし、腕の立つ武蔵に敵わぬと知った狼たちは高みの見物を決め込んでいた駕籠屋を襲い始める。が、その駕籠屋が武蔵も驚くほどの剛腕で狼たちの退治を始めるというお話。ストーリー同様、松樹さんの声には勢いがあり、面白かった。

 

続いて、鯉風先生の「赤穂義士銘々伝、神崎詫び証文」


赤穂浪士を取り上げた講談は数多くあるが、四十七士のエピソードを伝えているものを「赤穂義士銘々伝」というらしく、この物語は赤穂浪士の一人で、討入りのために江戸に向かう途中、浜松に立ち寄った神崎与五郎を取り上げている。浜松の酒屋で休んでいた与五郎は、大酒呑みで酔うと狼藉を働くという馬方の丑五郎に絡まれてしまう。その気になれば簡単に斬って捨てられる相手だが、大事の前の堪忍が肝要と我慢し、与五郎は丑五郎の言うままに詫び状をしたためる。その後、与五郎たち赤穂浪士が吉良邸に討入りし、主君の無念を晴らした上で切腹したと知った丑五郎は驚き、与五郎への無礼を後悔して泉岳寺に向かうと、以後、浪士たちの墓を守り続けたという話だった。目の前に与五郎と丑五郎が出て来るようで、特に与五郎の吉良邸討入りと切腹を知り、もはや無礼を詫びることもできぬと知って後悔する丑五郎の姿に感動した。

 

そして、旭堂南海さんの「赤穂義士外伝、忠僕元助」


赤穂義士銘々伝に対し、四十七士ではなく、赤穂浪士に関連する人や出来事などを取り上げたものを「赤穂義士外伝」というらしい。この物語は赤穂浪士の一人、片岡源五右衛門に仕えた元助という忠僕の話だった。吉良邸討入りを控え、浪士たちは大石内蔵助から身辺整理をしておくよう命じられ、源五右衛門も長年仕えてくれた元助に暇を出し、赤穂にいる源五右衛門の妻と子の面倒を見るよう頼む。驚いた元助は理由を尋ねるが、まさか吉良邸討入りを明かすことのできない源五右衛門は思いつくままに嘘を付き、それが直ぐにばれてしまい、ついには元助がそこまで嫌われたなら死んでお詫びすると脇差を抜いて死のうとする。そこに偶然立ち寄った浪士から他言無用で討入りの計画を聞かされた元助は自分の不明を詫び、討入りを果たした翌朝には新鮮なみかんを持参して浪士たちを労うという話だった。互いに相手を思いやる源五右衛門と元助のやり取りが実に温かくて面白く、大いに笑わせて頂いた。


ここで中入り。(続く)