1962年にフルブライト奨学生としてアメリカに留学された同志社大学の先輩がおられる。今年91歳になられ、腎臓を患われたことから人工透析を毎週受けておられるが、本質を鋭く見抜く眼力と、時には辛辣に時にはユーモラスに書き記す表現力は衰え知らずで、定期的に出される「91歳 透析爺さんの繰り言、虚言、寝言集」も第3号を迎えた。



最も印象に残ったのは「あのアメリカはどこへ行った?」というタイトルで書かれた随筆だ。1962年、先輩は初めてアメリカに渡り、アリゾナでオリエンテーションを受けた後、空路アメリカ大陸を横断されるが、一眠りしても延々と続くトウモロコシと大豆畑を見て、こんな広大な国となぜ戦争をしたのかと素朴に思ったとある。

到着したシカゴは一転、喧騒の近代都市で、その活況振りに圧倒されながら飛行機を乗り換え、留学先のイリノイ大学へ。空港で出迎えてくれたのは学部長と地元の人たちで、みんな素朴でおおらか、明るく敗戦国日本の留学生をハグして迎えてくれたと書いておられる。先輩の知るアメリカは超大国で、米ソ対立の時代ではあったが、国民は寛大で弱い者や他人を慮る気性に満ちていたということらしい。

そのアメリカ国民が「アメリカ・ファースト」や「MAGA」を提唱するトランプ大統領を再び選んだ。以後、アメリカは高い関税率を各国に課し、国際的な機関からの脱退や多国間協定からの離脱を進め、孤立主義、モンロー主義に舵を切ったかに見える。そんなアメリカに驚き、残念に思っておられる先輩の気持ちがひしひしと伝わって来た。同志社の設立も、新島先生がアメリカで出会った人々からの援助なしでは成し得なかったから、アメリカの変化は気になるところだ。