先週の土曜日、バイオリニスト天満敦子さんとピアニスト岡田博美さんによるデュオ・リサイタルが紀尾井ホールで催された。



プロフィールによれば、お二人とも学生の頃から様々なコンクールで受賞を重ね、海外でも学び、あちらこちらで演奏されてきた日本を代表する音楽家だが、目を引いたのは、「これからは各駅停車!」と題して天満敦子さんが記されたパンフレットのあとがきだった。昨年夏、上高地に旅行された際の写真を掲載されていたが、車椅子に座った天満さんが優しく微笑んでおられる。

天満さんによると、遡ること3年半前に「頸椎損傷」を発病され、バイオリンを弾くどころか日常の生活も困難な状況になられたようだ。手術は成功したものの、12本の釘が首に埋め込まれ、これからも不自由が続くと書いておられる。しかし、「大学院を卒業以来、まるで新幹線のように突っ走ってきましたが、これからは数は少なくてもコンサートの一回一回を噛みしめながら歩んで行こうと思います。各駅停車です」と結んでおられる。

その天満さんが杖をつき、岡田さんに手を取られてステージに出て来られたが、バイオリンを構えるとまるで別人になられたかのように背筋をシャンと伸ばし、悠然と演奏を始められたのには驚いた。特にフランク作曲の「ヴァイオリン・ソナタ」の演奏では、天満さんが弾かれるバイオリンの音色に重みとエネルギーを感じ、大変失礼ながら、天満さんがしなやかに躍動する黒豹のように見えた。岡田さんのピアノはそんな天満さんの身体を癒すように吹き抜ける軽やかで爽やかな風のようで、これは素晴らしいコンビだと思った。初めて聴いた曲だったが、心を揺さぶられる思いがした。