毎日新聞に面白い記事があった。東京大学の小林武彦教授(生物学)によると、「野生動物は老いない。老化するのは人間だけ」とのことだ。

 

例えば、海から遡上して放精や産卵を行う鮭は現役バリバリだから逆流を遡れる訳だが、生殖を済ませた途端、脳が委縮を始め、ホルモンが出なくなって死んでしまうそうだ。「子孫を残してくれてご苦労さま。あとはゆっくり余生を楽しんでね」という老後が鮭にはないのだ。

 

文字通り、ピンピンコロリだが、何故そんなことが起こるのかというと、激しく変化する環境で生物が生き延びるには、生物も変化を続ける必要があり、古い世代が死に、新しい世代が生まれることで生物は環境に適応できる進化を遂げて行くものらしい。そう言われると、デジタル化に順応しているのはアナログ派の私より明らかに子供たちや孫たちだし、新しい世代の方が変化に適応できる可能性が高いということだろう。

 

では、人間だけが老化することに何か意味や理由があったのかが気になるが、小林先生は「若い親に代わって子守りをしたり、経験知から若者たちを指導したりする共同体は統率が取れて効率的、シニアのいる共同体は生産性が高かったから、ヒトの進化には好ましかったのだろう」とおっしゃる。又、「若い時は動物のように私利私欲に走りがちだが、年を重ねると利他的になる。だから、野心ある若者を公共性の高いシニアが支える二層構造ができれば、社会の効率は上がる」と結んでおられた。

 

 

以上、古い世代になってしまった私からすると、老後があることを喜ぶべきなのか、野生動物同様に、若い世代の邪魔をしてはいけないと心掛けるべきなのか大いに迷うところだが、多摩動物園の猿の背中を思い出すと、「自分の人生を生きろ!」がぴったり来るように思う。