お世話になっている整形外科医の先生から、「能楽にご興味はありますか?」 と尋ねられ、「全くなかっただけに、急に興味が湧いてきました」と答えたら、ご友人の能楽師、奥川恒治さんが催される能楽の会をご案内下さった。



何の準備も下調べもせずに出掛けたのだが、最初の「仕舞」で「地謡」と呼ばれる方々の朗々とした歌声に驚いた。歌の内容は良く分からないが、耳に大変心地良く、聴く内に不覚にもうとうとしてしまった。次の「狂言」は三名の登場人物が茶壺を巡って争うというお話で、こちらも台詞の内容が全て分かった訳ではないが、動作や舞いがユーモラスで、思わず笑ってしまう場面があった。


さて、メインの「能」は「大原御幸」という物語で、パンフレットには「檀ノ浦で海に身を投げた平清盛の娘、徳子が源氏の武将に助けられ、息子である安徳天皇や一門の菩提を弔うために出家し、建礼門院となって暮らしている。そこに後白河法皇が訪ねてきて、安徳天皇の最期の話などを聞く」という解説があった。それを読んでいたから物語の展開に付いていけたように思うが、主役の建礼門院は能面を付けて居られるし、他の登場人物も表情が変わらず、動作も大きくないから、目から入る情報だけでは理解できないように思った。


それでも舞台に惹き付けられたのは、リズムや強弱が場面によって変わる大鼓や小鼓、笛の音、地謡の歌声から緊迫した状況や深い悲しみが伝わって来たからか。最近はCGを駆使した映像などに慣れているから、例えて言うと、動画ではなく静止画像を10秒毎に見ているような感覚だったが、その分、一所懸命聴こうとしたし、又、建礼門院の心中を推し測ろうと自然に努力したように思う。ひょっとしたら、それが能楽の面白さか。