百田尚樹さんの「海賊とよばれた男」を読んだ。

 

 

石油会社を立ち上げ、国内では先行する企業や官僚主義と戦い、国外では強大な石油カルテル、セブン・シスターズに単独で挑む国岡鐡造が主人公だ。出光興産の創業者、出光佐三氏がモデルで、後半には私の記憶に残っている事件や人物も出てくるから、読み進む内にその時代に戻り、何が起こるのかを目撃しているような感覚になり、気が付くと主人公の国岡鐡造を応援していた。


国岡鐡造は不正や怠惰を許さぬ熱血漢だが、強い使命感と細やかな情を持ち、磁石のように周りの人々を引き付けて行く。反面、既得権にあぐらをかく人たちや供給側の論理で市場を支配しようとする人たちを敵に回し、様々な妨害に遭いながらも、石油のためとあれば殆ど外交のなかったイランやソ連にも赴き、ライバルや世間をアッと言わせる。


そういう大きな挑戦の場面になると、国岡鐡造は失敗を恐れる重役たちに対し、「国岡商店のことはどうでも良い。日本のために、日本のためにやるんだ」と言う。最初は何を大袈裟な、と思っていたが、国岡鐡造が動かした人々や会社、組織、国家を考えると、彼は本心からそう考えていたと思えるようになった。敗戦で廃墟と化した東京が、僅か19年後の1964年にはオリンピックの舞台となる。その奇跡的な復興の陰には、国岡鐡造のような先人が大勢おられたのだろう。