曽野綾子さんの著書だ。過去に書かれたエッセイをテーマ毎に再編集し、一部加筆修正されたものらしい。何度か著書を読んだ経験からすると、曽野綾子さんは「孤独を恐れず毅然と生き、思うところは遠慮なく、しかし、大声ではなく品良くサラリとおっしゃる方」のように思う。


言い方は優しくとも、ここまで言うと反論してくる人もいるでしょうね、と言いたくなるエッセイもあったが、私自身は心の中で拍手を贈りながら読ませて頂いた。そんな中、最も印象深かったのは、元ペルー大統領のアルベルト・フジモリ氏について書かれたエッセイだ。私の記憶にも残る驚きの出来事だったはずだが、曽野綾子さんはこんな風にサラリと書いておられる。

「2000年の11月に元ペルー大統領のフジモリ氏は滞在中の日本で亡命し、その翌日から私の家で約百日あまりを過ごすことになった。私たち夫婦はただ、当時空いていたプレハブの別棟をフジモリ氏と広報官という人に、お使いください、と言っただけなのである。」

フジモリ氏が出て行かれた日には、警備の警察署長も一緒に満開の枝垂れ桜の下で記念写真を撮られたとか。人生など予測できないから、時としてこうした艶やかな別れを贈られる、と結んでおられるが、国籍や政治、宗教、思想、信条を超えて、人はここまで強くなれるという見本のように私は思う。