25回目を迎えたという佐藤しのぶさんの「母の日に贈るコンサート」を聴きに行った。第1部はシューマン作曲の「女の愛と生涯」という8曲からなる歌曲を歌われたが、恋に落ちた一人の女性が愛し愛される喜びに目覚め、やがて身ごもり、しかし、最愛の夫が亡くなるという悲しい結末を迎える物語だった。その落差の表現が見事で、最後は主人公のことを思い、ドキドキしてしまった。


第2部はN響から名誉コンサートマスターの堀正文さん始め6名の奏者が登場され、佐藤しのぶさんとの共演もあれば、バイオリンやクラリネットの演奏もありという、さまざまな音楽を楽しめる贅沢で刺激に富む時間になった。演奏と演奏の間の佐藤しのぶさんのお話もユーモアたっぷりで観客席に笑いが起こり、とても和やかな空気に包まれた。

そんな中、佐藤しのぶさんが歌われた「約束」には、亡くなった母のことが思い出され、涙が出た。死の床にありながら幼い息子の将来を案じて涙を目にためる母親が出てくるが、その歌詞のところで亡くなった母のことを思い出した。最後の入院をしていた母は半ば意識も朦朧としていたのか、私が見舞うとベッドから起き上がろうとし、「お腹が空いてるやろ?何か作るわ」と言ったのだ。それを聞いた私は何とか泣き出すのを我慢し、「お母ちゃん、食べてきた。大丈夫や」と返すのがやっとだった。

母というのは本当に有り難い存在だ。それを佐藤しのぶさんが思い出させてくれた。感謝。