父が経営していた会社の近くに、サイフォンでコーヒーを淹れる昔ながらの喫茶店がある。7、8人で満席になる小さな店で、マスターのゴローさんがカウンターの中からお客さんを応対される。父も常連客の一人で、ゴローさんとお喋りしながら毎日のように大好きなコーヒーを味わっていたらしい。

父が亡くなり、葬儀も最後のお別れの時間を迎えたとき、ゴローさんが近付いて来られ、「これ、親父さんに持たせて上げて」と小さな紙包みを私に渡された。手に持った感触と良い香りから、それがコーヒー豆だと分かり、ゴローさんの温かな思い遣りに涙が出た。

そういう優しいゴローさんだから、3年前の年末、ゴローさんの店で「おふくろのお節料理が懐かしいっす」とこぼしたら、直ぐに奥さんに電話され、「賢ちゃん(私の愛称)にお節を食べさせたってくれ」と頼んで下さった。厚かましいとは思ったが、頭の中がお節料理でいっぱいになり、ゴローさんのご自宅にお邪魔すると奧さん手作りのお節をたっぷり頂いた。以来、すっかり味をしめた私は毎年ゴローさんのご自宅に伺い、一足早いお節料理を頂いている。


どれもこれも美味しくて後を引くが、涙が出るほど嬉しいのは次の2つだ。


ぼうだら(棒鱈)を煮たもの。乾燥させた棒状の鱈を水に戻し、ことこと煮るらしい。私の大好物🎵


丹波の黒豆。ふっくら膨らみ、豆の表面に皺一つない。お見事!

ゴローさん、奧さん、ありがとうございます! 来年もお腹を減らして帰りますので、宜しくお願いします。本当に厚かましいと思いますが、父の教育が悪かったということで(笑)