ソプラノ歌手の田村麻子さんとピアニストの神崎えりさんによるジョイント・リサイタルを聴きに行った。歌声もピアノ演奏も素晴らしかったが、趣向を凝らした企画にサプライズがあり、大いに楽しませてもらった。


第1部は、田村麻子さんがNYのリンカーン・センターなどで探し出したという100曲を超える「アヴェ・マリア」の中から8曲の「アヴェ・マリア」が厳選され、内7曲を田村麻子さんが歌い、1曲は神崎えりさんがピアノで独奏するという構成だった。グノーやシューベルトの「アヴェ・マリア」など聴き慣れたものもあったが、初めて聴く「アヴェ・マリア」が多く、又、同じマリアさまがテーマでも豊かな個性が各々に感じられ、大変興味深い演奏になった。個人的には、ジュリオ・カッチーニ、アストロ・ピアソラ(ピアノソロ)、ジャン・アランの「アヴェ・マリア」が私好みで、大変満たされた気分になった。

第2部は、山田耕筰作曲、北原白秋作詞の「この道」とプッチーニの歌劇「ジァンニ・スキッキ」から「私のお父さん」が歌われ、その後、「歌とピアノの即興演奏を披露します」という説明があったので、何が起こるのかと見守っていたら、最前列の特別席に座って居られた3名の方々から紙が回収された。その紙には特別席の方々が詩や俳句を書かれていたようで、その言葉に曲を付けて演奏しようという企画だった。

田村麻子さんと神崎えりさんの打合せは1~2分のもので、一体どうなることやらと心配したが、お二人は互いに相手の意図を感じることができるのか、即興とは思えない立派な演奏になり、しかも、詩や俳句の内容に従った曲風になっていることに驚き、感動し、心から拍手を送らせて頂いた。

最後に歌われたのは「聖なる母の愛と祈り」という田村麻子さん作詞、神崎えりさん作曲の新曲で、母の愛を歌い上げたものだったが、歌詞に「生まれてきてくれてありがとう」や「神さま、会わせてくれてありがとう」とメッセージが出てきて、ちょっとウルウルしてしまった。田村麻子さんの歌声にはパワーと優しさがある。今回も温かな気持ちになり、会場を出た。