佐藤しのぶさんとは一度だけお目に掛かったことがある。謙虚な方だったが、日本を代表するプリマドンナだ。
第1部はオペラ「蝶々夫人」の名曲など海外の歌を、第2部は團伊玖磨さん作曲の「花のまち」など平和への祈りを込めた日本の歌を歌われた。
歌われる前に、第1部なら歌詞が意味するところを、第2部なら曲が生まれた背景を時にはユーモラスに、時には感情を込めてお話しになるので、それを伺い、佐藤しのぶさんの歌を聴くうちにどんどん佐藤しのぶさんの世界に引き込まれて行ったように思う。
第1部の圧巻は蝶々夫人が歌う「ある晴れた日に」と「かわいい坊や」だ。言葉は分からないが、ピンカートンへの愛情、再会への期待、裏切られた悲しみ、そして息子への思いがひしひしと伝わってきて、佐藤しのぶさんの表現力に舌を巻いた。
第2部は團伊玖磨さんが戦後の焼け野原を花いっぱいの町に復興させたいと願い作曲された「花のまち」に始まり、沖縄を歌った「さとうきび畑」、反戦を歌った「Remember」と「約束」、そして「花は咲く」が歌われたが、どの曲も佐藤しのぶさんの熱い思いが伝わってきて感動した。
歌唱力もさることながら、佐藤しのぶさんの目や表情には力があり、何かを主張されるときの毅然とした立ち姿や、喜びや悲しみを伝えるときの仕草も実に魅力的だった。昔からのファンと思われる方も大勢居られたように思うが、皆さん、佐藤しのぶさんのお人柄や生きざまもお好きなのに違いないと思った。
