佐藤 優さんの「十五の夏」下巻を読み終えた。
帯に書かれている通り、この本は「少年を『佐藤 優』たらしめたソ連・東欧一人旅42日間の全記録」であり、佐藤さんが持っておられた能力や感受性、もっと言えばご本人も気付いておられなかったお人柄や性格がこの旅行中に引き出されたような気がする。特に印象に残った場面を書いてみる。
①旺盛な好奇心
ブハラという町で佐藤さんは日本人の団体旅行者と出会われるが、早速、日本語が達者なロシア人のガイド、ワロージャを相手に様々な質問を投げ掛け、生きた知識や情報を得ておられる。又、ワロージャが案内する安全な団体行動を断り、言葉もできないのに単独でバザール(市場)の視察に出掛け、現地の人々と交流しておられる。この積極的で大胆な行動は旺盛な好奇心に裏付けられたものだろう。
②豊かな感情
タシケントで某私立大学の関係者と思われる5人組の旅行者と一緒になるが、「社会体制の異なる国を若い内に見てくるのは良いことだ」と佐藤さんを送り出したご両親のことを、5人組の中では最年長と思われる男性が「変わった親だ」と批判してしまう。佐藤さんは心から敬愛するご両親のことを悪しざまに言われて激高し、「失礼だ」とテーブルを叩いて抗議される。愛情深く育てられ、豊かな感情を持ち合わせていなければ、高校生の分際で初老の男性に歯向かうなどできなかったろう。
③怯まない胃袋(順応性)
佐藤さんはハバロフスクで熱を出して寝込まれるが、十分な睡眠を取って回復されると空腹を覚え、レストランへと向かわれる。そこで灰色のパンにバターをぬり、サラミソーセージのオープンサンドを作って食べると、メインディッシュのビーフストロガノフとバターライス、デザートのアイスクリームをきれいに平らげるが、その間、ポーランドで食べたジャガイモのピューレやハンガリーのフィフィ家でご馳走になった食事を思い出し、又、ルーマニアの食事は美味しくはなかったが食べられなくはないし、将来ソ連に留学しても食事には不自由しないと言い切られる。この頑丈な胃袋と高い順応性は佐藤さんの財産に違いない。
④明確な善悪の基準
佐藤さんはナホトカから横浜に向かうバイカル号の中で知り合った元北大生から、「みやげものを免税にしよう」と提案され、うっかりその話に乗ってしまうが、税関で不正が明らかになり、みやげものは没収、反則金を払う羽目になってしまう。しかし、そういう事態に陥ってからの佐藤さんは実に潔く、堂々とされている。恐らく、明確な善悪の基準をお持ちなのだろう。
縁あって同志社大学の神学部で学ばれ、その後、外交官になられた佐藤さんには波乱の人生が待ち受けるが、それらを逞しく乗り越えられた原動力も旺盛な好奇心、豊かな感情、怯まない胃袋、そして明確な善悪の基準だったように思うのだが、どうだろう。もし、佐藤さんに会う機会があったら尋ねてみよう。
