バイオリンを作っておられるO先生の工房にお邪魔した。扉を開けて中に入らせて頂くと、先ず、弦が張られる前のバイオリンやニスが塗られる前のバイオリンが並んで吊るされているのが目に入った。何やら、お化粧前の女性を見てしまったような気がして、ちょっとドギマギした(笑)


O先生はドイツでバイオリン作りを学ばれ、それから60年もの間、バイオリンを作り続けてこられたとのこと。60年と言えば、私の年齢にほぼ等しいから、既に達人の心境なのかなと思いきや・・・


「どう作れば良いのかが分かるまで時間が掛かった。分かってから、それを形にできるまで更に時間が掛かった。ここまで来るのに60年掛かったが、今でもニスが思い通りにならないとか、満足できないことがあるものだ」とおっしゃるではないか。聞くほどに頭の下がる思いがした。


この4月で社会に出て満40年になる。数々の失敗をしてきたが、上司を始め回りの人達に助けられ、お取引先には許されて再挑戦の機会を与えて貰った。しかし、O先生のバイオリン作りはたった一人での作業で、やり直しのきかない失敗もあったに違いない。それに気付くと、並べられた未完成のバイオリンが愛おしく思えてきた。

一つでも多くのバイオリンが、この工房から世に出ていけますように!