平尾誠二君と山中伸弥先生の出会いは偶然から始まり、しかし、互いに深く惹かれ合うものがあり、そこに平尾君の生命を奪うことになる病が襲い掛かり、結果として、もの凄く熱くて濃い一年になったのだと思う。読み進む内に、何度か泣きそうになる個所があった。
平尾君も山中先生も素晴らしいお人柄で、更にはそれぞれが素敵な家族を持っておられ、互いに心を許し、信頼し、相手のことを自分のこと以上に思いやるシーンには胸が熱くなった。深く信頼し合うことで、感動的なドラマが生まれるということか。
山中先生が平尾君の思想を次のように説明されている。
「彼は著書『理不尽に勝つ』の中で、ラグビーボールが今も楕円形なのは、世の中というものが予測不可能で理不尽なものだから、その現実を受け入れ、そのなかに面白みや希望を見出し、困難な状況を克服することの大切さ、素晴らしさを教えるためではないだろうか・・・と述べています。」
一方の平尾君は、山中先生との対談で次のような質問をし、山中先生の思想を引き出している。
「iPS細胞の研究でアメリカはものすごい額の研究費を出しているんでしょ?」
「まともにいったら負けるのは分かっている。でも、やめるわけにはいかない。日本はアメリカより少ないとはいえ、何十億円という税金を使わせてもらって綱引きをやれと言われているんですから。相手は百人でこちらは十人、力勝負で挑むのはちょっと無理なんで、そこはもう工夫するしかない。(中略) だから、僕らは綱引きの綱を作るようなことを考えているんです。アメリカと綱引きしたら負けます。でも綱は日本でしか作れないんだ。綱がなかったら、綱引きはできひんやろ、というようなものを。」
ここを読んで、「なるほど、二人は惹かれ合った筈だ」と思った。ラグビーも、まともに当たったところで体格やフィットネスに優る海外勢にはなかなか勝てない。だから、綱引きの綱のようなものを平尾君も探し続けていたのだろう。
彼が最後に遺した言葉は「頑張る」だったようだ。最後まで戦い続けた平尾君に勇気を頂いた。合掌。
