精神科医、泉谷閑示さんの著書だ。
泉谷閑示さんに興味を持ったのは、JAF機関誌の人生相談で「いつも彼女がいる男性ばかりを好きになってしまうのですが、そんな私は異常でしょうか?」と質問してきた女性に対し、「そういうこともあるでしょう」と肯定し、更には「愛は道徳を破る」という神話学者ジョーゼフ・キャンベルの言葉まで紹介されていたからだ。これは面白いお医者さんだと思い、早速著書を買わせて頂いた。
いくつか印象に残る記述があったが、最初になるほど、と思ったのは「子育てのポイント」だ。泉谷先生は大学で精神医学や心理学を教えておられるが、女子学生から「良い子育てのポイントは何ですか?」と尋ねられたとき、「私はクリスチャンではありませんが、マリア様がイエスを育てたようなつもりで育てること」と答えられたらしい。
先生曰く、聖母マリアはイエスを神の授かりものとして育てたのであって、決して自分の子供とは思わなかっただろうとのこと。すなわち、自分の子供を他者として認識し、一体この子はどんな人間なんだろうという自然な関心を持ち、丁寧に観察することが大事だとおっしゃるのだ。「子供に良かれと思って」という親の気持ちは時に親のエゴであるという警告でもありそうだ。
子育ての最中はそこまで冷静にはなれないし、心の余裕もないように思うが、この歳になって成長した子供たちを眺めると、確かに子供たちは私たちとは異なる時代を生きて行く別の人格なんだと分かる。泉谷先生がおっしゃる通り、「授かりもの」なんだろう。
(続く)
