「競艇」と聞くと、オジサンの加齢臭とタバコの煙でムンムンというネガティブなイメージしか湧いて来ないが、今や「ボートレース」というスマートな呼び方に統一され、多くの女性選手も参戦する開かれた競技になっている。これまで足を踏み入れたことのない世界だが、お世話になっているT医師から今年の賞金女王を決定する「クイーンズクライマックス」の前夜祭を覗いてみませんかとお誘い頂いた。聞けば、T先生は競技中の万一の事故に備え、会場で待機するという医師としての役割を長年果たして来られ、ボートレースの世界には友人知人が居られるとのこと。これも何かのご縁と思い、お言葉に甘え、ご一緒させて頂いた。
平和島への道すがら、T先生からボートレースについていくつか教えて頂いた。強く印象に残ったものを挙げると、①ボートはスピードを出すために軽量化が図られ、厚みが5mmしかない板が使われている。②ボートの底にはゴムシートが貼られ、選手はその上に正座してボートを操る。③ブイの周りをターンするとき、選手は立ち上がり、左手でスピードを調整するレバーを、右手でハンドルを操作する。これをモンキーターンと言うが、これからも分かる通り、選手たちはシートベルトをしていない。④ボートは最高時速80kmで疾走するが、ボート同士で接触するのは当たり前で、破損したボートが沈んだり選手が放り出されることもある。⑤選手たちは身を守るためケブラー繊維でできたユニフォームを着ているが、ボートから放り出され、後ろから来たボートのスクリューに巻き込まれると大きな怪我をしてしまう、等々。
話を聞いている内に、こんなにハードで危険な競技に参戦する女性とは一体どんな方々なんだろうと考え込んでしまった。選手になるには選手を育成する専門の学校で学ばねばならず、一瞬の判断ミスが大きな事故を招くこともあり、非常に厳しく苦しい指導と訓練を受けるとのこと。又、ボートに取り付けるモーターやスクリューの整備や調整も選手自身で行わねばならないことから、メカにも強くないと務まらない。その上、前夜祭に出て来られる12名の選手は賞金ランキングの1位から12位にランクされている方々だと聞くと、身体つきは雌ゴリラみたいに屈強で、目は合わせるのも躊躇するほど冷たく、決してニコリともしない怖い女性ばかりかなと想像して会場に入った。
ところが、だ。出て来られた選手は皆さんスリムで優しい顔立ちをされている。話し方も丁寧で物腰も柔らかく、地下鉄で乗り合わせても、カフェで隣り合わせても全く違和感のない人たちだ。しかも、ニコッと笑われると、とてもそんな激しい競技に出場し、ライバルを押しのけたり出し抜いたりされるようには見えない。失礼を承知で、ファンの方々と談笑されている選手の方々を一人ひとり観察したが、やはりそんなに激しいバトルを繰り広げられる姿が想像できない。例えば、T先生が応援されている選手の一人である海野ゆかりさんはこんな美人なのだ。
これは一度、実際の競技を見せてもらうしかないようだ。亡くなった父が「競輪、競馬、競艇にのめり込んだらアカンぞ」と良く言っていたが、父もこの写真を見たら、「一度、戦いぶりを観てこい」と言うように思う。T先生に感謝。

