白のジャケットに身を包んだコーロ・カステロがステージに出て来られた。大きな拍手が沸いた。

 

 

最初に歌われたのは「Bande di Alpini」というイタリア民謡で、1990年代にイタリアを訪問されたコーロ・カステロがコモ湖近くの男声合唱団から入手、それに詞を付けて編曲された歌とのこと。だとすれば、この歌を日本で歌えるのはコーロ・カステロだけで、しかも20年もの間、大切に保存されてきたことになる。又、コンサートの終わり近くで歌われた「故郷にて若き日を憶う」はベートーベンのピアノソナタ27番第2楽章に日本の故郷をイメージした合唱を乗せた曲とのこと。すなわち、コーロ・カステロが創造されたオリジナル曲だ。こういう歌に対する愛情、好奇心、そして挑戦を続ける精神こそコーロ・カステロの財産かなと思う。

 

永久団員で名アコーディオン奏者だった宮長大作さんがシベリア抑留から持ち帰られた「Salavi」は、哀愁漂うメロディーと力強い響きが交互に出て来る歌で、これも男声合唱に相応しい曲だと思った。その次に歌われた「Troika」は永久団員で名指揮者だったアキさんの愛唱歌だったとのこと。アキさん晩年の頃だと思うが、椅子に座って指揮をされていた姿を今も覚えている。録音されていたアキさんの歌声が流れ、皆さんがそれに唱和された。ステージにはアキさんの写真が映し出されたが、コーロ・カステロを支え、皆さんから信頼され愛された方だったのだと思う。70周年に相応しい企画だったと思う。

 

その後に歌われた「ヴォルガの船曳歌」と「Pilger Chor」(歌劇タンホイザーより)が今回の舞台では秀逸だったように思う。個人的な好みがあると思うが、コーロ・カステロの力強い歌声に、私は苦しみに耐える男の意地や使命感のようなものをいつも強く感じる。ヴォルガの船曳歌を聴いていると、正に苦しみに耐え歯を食いしばって船を曳く男たちの姿が思い浮かぶし、タンホイザーの巡礼の合唱には男の決意や信念が感じられた。この2曲は特に聴き応えがあったと私は思う。

 

アンコールに応え、最後に歌われたのは「アヴェ・ヴェルム・コルプス」で、「会場の皆様もご一緒に」というご案内があったのだが、「そうは言っても、歌う方などおられないだろう」と思っていたところ、隣のご婦人がいきなり美しいソプラノで歌い始められた。あれれ、と思っていたら、今度は後ろからもきれいな歌声が聞こえてきた。どこにも楽譜はないし歌詞もない。ということは、合唱の心得のある方が多く来ておられたということだ。かように、コーロ・カステロはレベルの高いファンをお持ちということだ。幸せなことだが、反面、これはプレッシャーになるし、来年のコンサートも手抜きはできないだろう・・・・と私も来年の71回目のコンサートのために、今からプレッシャーを掛けておこうと思う(笑)

 

コーロ・カステロの皆さま、素敵なコンサートでした。ありがとうございました。