バッハの「二つのバイオリンのための協奏曲」を弾いた。一人では演奏できない曲だが、幸い、勤務先の同僚Oさんが第一バイオリンを引き受けてくれた。又、ピアノ伴奏はいつも通り同じ合唱団のTさんにお願いできたので、両手に花の演奏という贅沢な機会に恵まれた。

バイオリン

問題は実力差があったことで、ピアノのTさんも第一バイオリンのOさんもバッハの希望通り早く弾けるのだが、私はそのスピードに付いていけない。無理に付いて行こうとすると左手の指が絡まって狂った音を出してしまい、聞くに耐えない演奏になる。そこから苦悩が始まった。

先生はきちんと弾けることが大事だと常々おっしゃるが、合同練習になるとついつい速く弾こうとして失敗する。そうすると、そのスピードでも失敗しないようになろうと何度も速く弾き、同じところで再び失敗する。この悪循環にはまり、自信を失くしてしまった。

本番一週間前のレッスンで先生にそれを訴えたら、私がミスなく弾ける限界スピードを測って下さった。そのことから、大学時代、ラグビーの走るコースを確認する練習で「全員歩いてやれ」と言われたことを思い出した。

走るコースを歩いて学ぶことには違和感があったが、やり始めると、味方の選手や敵の選手のポジショニングから、自分はここにいないとまずいという場所が良く分かってくる。なるほど、「ゆっくりやってできひんことは、絶対に速くはできひんねん」とコーチも言っていた。

それからは速く弾くと失敗する3カ所を繰り返しゆっくり練習することにした。結局、本番ではその内の2カ所は辛うじてクリアできたものの、最後の1カ所で指がもつれ、1小節飛ばしてしまったが、その後すぐに追いつけたのは動揺が少なかったからだろう。バイオリンもラグビーも地道な練習が大事ということか。