年に一度の発表会があった。

今年は「ポル・ウナ・カベサ」というタンゴと、佐藤眞作曲の「大地讃頌」を弾かせてもらった。「ポル・ウナ・カベサ」はアル・パチーノが盲目の元軍人を演じた映画「セント・オブ・ウーマン」に出てくる曲で痛く心を揺さぶられた。目の見えないアル・パチーノがレストランで若い女性をダンスに誘う。その場面で流れる曲だが、最初に優しい長調の旋律が軽やかに流れ、その後、一転して情念が燃え上がるような短調に転ずる。

アルパチーノ

「こういう曲が弾けるようになりたいです」と先生にお話したら、直ぐに楽譜を準備下さり、年に一度の発表会で演奏することになった。ところが、「聴くと弾くでは大違い」で、長調の軽やかさが出せないし、短調の情念も出せない。多分、音の強弱だけではなく、音の一つひとつに感情がこもらないといけないのだろう。

一所懸命練習はしたが、どこか確信が持てないまま発表会の当日を迎えた。そして、出番を待つ舞台裏で熊さん(先生の旦那さん)とこんなお喋りをした。

ボル「この曲はともかく強弱の差を付ければいいんですよね?」
熊さん「うん、女性を誘うときって最初は優しくするでしょ?」
ボル「しますね。逃げられたら困るもん」
熊さん「でしょ?で、相手が安心したところで押し倒す!」(笑)
ボル「なるほど、そういう風にイメージして転調すれば良いんだ!」(笑)

緊張していたが、熊さんのお陰で気持ちが楽になり、本当に相手の女性を油断させて押し倒すイメージで弾いた(笑)出来栄えはともかく、楽しく弾くことができた。熊さん、ありがとう。