川畠成道さんというバイオリニストのコンサートに誘って頂いた。それまで、お名前も存じ上げなかったバイオリニストだが、プロフィールを読むと、子どもの頃に視覚障害を負われたと書いてある。それが8歳のときで、バイオリンをお父様の指導で習い始められたのは10歳のときだとか。決して早くはないと思うのだが、ひょっとすると、バイオリン以外のことに関心のある少年だったのだろうか。

川畠さん

高校から川畠さんは桐朋学園に進学され、大学卒業後は英国王立音楽院に留学、首席で卒業されたとか。素晴らしい経歴だが、どうやって勉強されたのだろう。楽譜はどうされたんだろう、先生からの注意や指示はメモもせずに記憶されたのだろうか。ともかく大変な努力をされたに違いないと頭の下がる思いで川畠さんがステージに出て来られるのを待った。

ところが、ステージに立たれた川畠さんには全く気負われたところがなく、実に飄々とされている。受け応えも自然体で、しかも軽妙、観客席からは笑いも漏れる。これで私もすっかりリ油断してしまったのだが、始まった演奏には度肝を抜かれた。とにかく、こんな音がバイオリンから出るのか、そんな弾き方があるのか、という驚きの連続で、さまざまなテクニックに目を白黒させてしまった。

演奏されたのはモーツァルト作曲バイオリン・ソナタ第33番ヘ長調、フランク作曲バイオリン・ソナタイ長調、そして、映画音楽からムーン・リバー(ティファニーで朝食を)、サンライズ・サンセット(屋根の上のバイオリン弾き)、ポル・ウナ・カベサ(セント・オブ・ウーマン)、最後にワックスマン作曲のカルメン幻想曲。いずれも素晴らしかったが、ポル・ウナ・カベサは特に胸が締め付けられた。

帰宅後、自分のバイオリンを取り出してしみじみ眺めてみることにした。このバイオリンも本当はもっと能力が高いのに、私が弾いているから十分にその能力を引き出せていないのだ。バイオリン、ごめんね!どう頑張っても川畠さんのようには弾けないけど、せめて「1年前より上手くなった?」という変化を味わってもらえるよう練習するね。うん?決意はいいからサッサと練習しろ?はい、確かに ((((((ノ゚⊿゚)ノ