丹羽宇一郎さんは伊藤忠商事で社長、会長を務められ、その後、民間出身では初の中国大使に任ぜられた方だ。しかし、就任3ヶ月後の2010年9月、尖閣諸島沖で中国漁船と海上保安庁の巡視船が衝突事故を起こし、日本国内は騒然となる。更に、2012年4月には石原都知事(当時)が東京都による尖閣諸島の購入計画を発表し、日中間の緊張が一気に高まる。

その尖閣諸島問題に翻弄されながらも中国在住邦人の安全確保や日中関係の正常化に心を砕き、しかし、日本国内では親中派とか中国寄りとまで批判された丹羽さんが書かれた本、それが「中国の大問題」だ。

中国の大問題

その通りだ、と思う丹羽さんの見方やご意見がいくつも出てくる。先ず、前文にあった「資源のない日本は海外との貿易なしに生きてはいけない。いかなる国とも争うことなく友好関係を築く必要がある。日本は世界で最も平和を求めなければならない国なのだ。そして将来を考えたとき、14億人の中国市場を開拓し、フルに利用していかなければ、日本が生き残る道はない」に異論を挟む余地はないように思う。

次に、丹羽さんはウイグル族やチベット族など少数民族問題について「多くの自治区は辺境に位置しているため、何千キロという長い国境を抱えて多くの国々と接している。海に囲まれた日本では想像しにくいが、陸続きの国境は隣国から容易に侵入できるし、地域によってはビザなしで隣国と日常的に行き来しているのが実態だ。中国の地図を見て自分ならどうするかと考えては途方に暮れる」とおっしゃっている。我々の感覚で中国を測るには無理があるのだ。

さて、丹羽さんは習近平国家主席と十数回会っておられるそうだが、習主席は会うたびに「両国は住所変更ができない間柄ですね」と繰り返されたとのこと。その際の印象から、習主席は実は親日家でフェアな人物ではとおっしゃっているが、私はそれが当たっているように思う。しかし、反日教育が行われている手前、日本に対する態度には神経質にならざるを得ないだろうし、私たち自身も忘れているが、先の大戦で日本は敗戦国、中国は戦勝国なのだから、私たちも中国からどう見られているかにもっと神経質になる必要があるように思う。

丹羽さんは本の終章で「日本という大問題」について書いておられるが、耳に痛い話のオンパレードだ。これも、中国や海外から見た日本を理解する上で非常に役立つ指摘だと思う。丹羽さんがあのまま大使を続けておられたら、と思わず想像してしまう本だ。