第一部でいちばん印象に残った曲は、フォスター作詞作曲、スワニー河を歌った「故郷の人々」かなと思う。メロディーを知っていたこともあるだろうが、ソロを歌われた方の滑らかな歌声、それを支える他のメンバーの哀愁漂う歌声に心癒される思いがした。その後、パンフレットの説明に「フォスター自身はスワニー河どころかフロリダにも行ったことがなかったが、この歌がヒットしたため河は観光地になったという」とあるのを見て苦笑いしてしまったが、フォスターという人も想像力と豊かな感情に恵まれた方だったのだろう。

演奏の途中で行われた指揮者やピアニストの紹介もユーモアたっぷりでほのぼのとするものだった。指揮者の高嶋邦幸さんは国立音大の声楽科を出られ、成城合唱団の指揮者をされるなど成城学園とは深いご縁があったようだが、コーロ・カステロに対してはあくまでも聴衆の一人だったとか。それが、コーロ・カステロからの強い勧誘を受け、2012年に入団されたようなのだが、司会者がそれを「400kgのカツオ一本釣りをさせて頂きました」と紹介され、会場から拍手が湧いた。400kgは私の聞き間違いかも知れないが、高嶋さんへの敬意が込められた、素敵な紹介だったと思う。

ピアニストの宮下 節さんのことは「不測の事態にも慌てることなく、涼しい顔で伴奏を続けて下さる方です」と深い信頼と感謝を込めた紹介をされていた。会場が一層和やかな雰囲気になった。思わず吹き出しそうになったのは、その宮下さんの隣で楽譜をめくる役割を担っておられた方を「専属フメクリストの宮下氏です」と紹介されたことだ。「フメクリスト(譜めくりスト)」とは上手いことをおっしゃる。専属と聞こえたので、勝手に宮下 節さんのご主人かなと思ったのだが、違っていたら申し訳ありません。

さて、第二部では3曲のロシア民謡を含む5曲を披露されたが、圧巻は「ステンカ・ラージン」だったと思う。その前に歌われたロシア民謡の「ともしび」ではアコーディオンの音色に胸を締め付けられ、「ヴォルガの舟曳歌」では男声合唱ならではの厚みのある歌声に聴き惚れた。しかし、「ステンカ・ラージン」の真っ直ぐな力強さには、ただただ圧倒された。何の前知識もなく、この歌を聴いて私の好きにタイトルを付けて良いと言われたら、「男の純情」と私は名付けたかも。 男声合唱でしか表現できない力強さや男の健気さ、純情さがあったように思う。