今月いっぱいで退職するという元同僚が挨拶にきてくれた。

10年前、大学を卒業したばかりの彼女が入社してきた。お父さんの仕事の関係で海外生活が長く、美しい英語を流れるように話し、私の倍ほどのスピードで英語を日本語に訳し、日本語を英語に訳した。「僕に英語を教えてくれる?その代わりに仕事を教えるよ」という交換条件を提示し、一緒に仕事をすることとなった。

性格が良く、周りの人のことを配慮できる彼女は社内でも社外でもファンを増やし、仕事が円滑に進む環境を自ら作り上げていった。又、私が話すことをメモし、それを読み返すという几帳面さからどんどん仕事を覚えていった。やがて、担当の仕事を一人で回せるようになったときに組織変更があり、彼女は別の部署へと移っていった。

その後、彼女の活躍を人づてに聞く機会が何度もあったので、よもや彼女が退職するとは予想もしていなかった。

ボル 「結婚か?」
彼女 「はい、それも考えてますけど・・」
ボル 「なんや、転職か?」
彼女 「はい」

彼女はファッション業界では良く知られている会社名を挙げ、その後、意外なことに、こう言葉を続けた。

「ボルさんから教わったことが仕事の基本になっているんです。ありがとうございました」

優しい性格がだから、こう言って私のことを持ち上げてくれたのだろうが、正直いうと、本当に嬉しかった。私自身は体育会の出身で、当時ラグビー部に力を入れていた総合商社に「裏口入社」したという経緯がある。そういう私を救って下さったのは江戸っ子で面倒見の良い、最初の上司となった先輩社員だ。その方の指導を受けていなければ今の私はなかったと今でも思う。

人は人から影響を受ける。中でも、幼い頃に両親から受ける影響、学生時代に先生から受ける影響、そして、初めて社会に出たときに上司から受ける影響は大きいように思う。

ウィリアム・ウォードという教育学者がこういう言葉を残している。

The mediocre teacher tells.
The good teacher explains.
The superior teacher demonstrates.
The great teacher inspires.

平凡な教師は一方的に話す。
良い教師は説明する。
優れた教師は行動で示す。
偉大な教師は心に火を付ける。

素晴らしい両親、先生方、最初の上司に私は恵まれたのだと思う。そう思っているのだから、多少でも人のためのお役に立ち、お返しをしなければならないと思う。

水仙