浜 矩子先生は同志社大学大学院の教授だ。校友会の会合で何度かお話を伺う機会があったが、物怖じせずに自分の意見や考え方をハッキリおっしゃる方で非常に潔い印象を与える。最近はアベノミクスに対する手厳しい批判が目立つが、私もアベノミクスには多少の疑問があり、「老楽(おいらく)国家論」というタイトルに惹かれ、購入した。

浜矩子先生

出だしは相性が良かった。22ページから23ページの記述。

「高度成長期の日本経済は勢いに満ちていた。(中略)今の日本に、あの頃の勢いは無い。だが、あの頃、山頂だと思っていたレベルをはるかに上回る高みにおいて、蓄えの豊富さを満喫している。(中略)かつては『低ストック・高フロー』の経済だった日本経済が、いまや『高ストック・低フロー』の経済になっている」。

そして、浜先生は安部首相の「日本を取り戻す」というスローガンへの危惧を表明されているのだが、この点に関しては浜先生の主張が正しいように思う。私が子供の頃は、日本は加工貿易で成り立つ貿易立国だと教えられた。すなわち、日本は鉄鉱石や綿花という原材料を輸入し、それらを元に製造した鉄鋼、機械、自動車、衣料等を輸出して幅広い産業に活気と仕事を与え、経済の復興と成長を実現していたように思う。

しかし、そうして稼いだ貿易黒字が米国を始めとする貿易相手国からは叩かれ、国内においてはバブル経済を引き起こす。そのバブル経済も崩壊することで日本は長い低迷の時代に入っていくのだが、貧しい国に逆戻りしたのかというとそうではなく、全く新しい局面を迎えたというのが正しい見方なのだと思う。例えば所得収支の黒字だ。いつの間にか、日本は貿易赤字を埋めてなお余りある所得収支の黒字を得られるようになっていた。

(続く)