サザエさん症候群というのがある。日曜夜のサザエさんを見ている内に、「あぁ、休みが終わってしまう」と憂鬱な気分になってしまうことだ。
これと似たような気分を下山途中で感じることがある。山の中では日常のことなど忘れているが、下界が近付き道が平坦になってくると余計なことを考え出す。「二合目症候群」とでも言おうか(笑) 私の場合はちょっと厄介な仕事を思い出すことが多く、予想される時間や手間を考えると気が重くなったりする。
今回の登山では久し振りにこの「二合目症候群」に陥った。急な坂を下り降り、休憩しているときのことだ。これからヤマ場を迎える仕事のことを思い出してしまった。関係してくる人の顔が浮かび、話をする順番や話す内容が気になってくる。しかし、一番気に掛かるのはどれだけ時間を要するかだ。果たしてちゃんと終わるんだろうか。
そんなとき、仙丈ケ岳を愛する会のN山会長の声が聞こえてきた。メンバーの一人が下山してきた山を見上げ、「この道から仙丈ケ岳に登るのは大変そうですね」と言ったときのことだ。N山会長はこう答えられたのだ。
「そんなことはないですよ。右足と左足を交互に出せば前に進む。それを繰り返していれば必ず頂上に着きます」
聞いた瞬間、夢から現実に呼び戻されたような気がした。全くその通りだ。未だ来てもいない先のことを思い煩う間に十歩でも二十歩でも歩いた方が目標に近付ける。しかし、案外、私たちは勝手に想像した困難に白旗を掲げ、実際の困難にぶち当たる前に立ち止まってしまうことが多いのかも知れない。
歩幅の小さい分は回転数で補う。
ただ、お前ら、同時に前に出るなよ。交互でええねん(笑)
