三つ目は命ある者の共存共栄の難しさか。
仙丈ケ岳は南アルプスの女王と呼ばれ、そのなだらかで美しい姿と共に、さまざまな高山植物が咲き誇るお花畑が人々から愛されてきたとのこと。ところが、そのお花畑が、ニホンシカの繁殖による食害を受け、草原化しているという。
現在はニホンシカの進入を防ぐ防御ネットが張られ、その内側では確かに植物の復活が始まっているが、それだけでは追い付かず、銃によるニホンシカの捕獲も試みられたらしい。捕獲と言うが生け捕りではなさそうだから、それを思うと、今度はニホンシカが気の毒になってくる。
高山植物からすればニホンシカは「天敵」で、高山植物を愛する人からすればニホンしかによる「食害」となる。しかし、ニホンシカからすれば生きるために食べるのは当然で、もし言葉が喋れたら、「肥満体は圧倒的にシカより人間に多い。必要以上に食べているのは人間だ。偉そうに言うな!」と言われそうだ(笑)
その人間は、「生態系を守る」とか、「生物の多様性を維持する」とか言っているが、そもそも、そういうものを一番乱してきたのが人間のようにも思うし、どんな理屈をこねようが、最後まで生き残るのは人間なんだという大前提があるように思う。地球への登場が遅かった割には厚かまし過ぎないか?
そんなことを考えながら仙丈小屋に入り、夕食の時間を迎えた。お味噌汁の良い香り、炊き立てのご飯、そして美味しそうなハンバーグ。そこに、管理人さんの声が響く。「残さずに食べて下さい。残したら1000円の罰金です」。
当然だろう。こういう食材を山小屋まで運ぶだけでも大変なことだし、何より、地球上の生きもので最も深刻な食害を起こしているのは人間に違いない。それを思えば、せめて「いただきます」と感謝してきれいに食べるのが他の生きものへの礼儀というものだろう。
日本の人口は減少中だが、世界の人口は増え続けている。しかし、農地面積は砂漠化などにより減少しているので、いずれ食糧難の時代が来ると言われている。人間同士も共存共栄を考えねばならない時代が来ているのだ。

