6月最後の週末、仙丈ケ岳に登った。


仙丈ケ岳は高山植物の宝庫で、南アルプスの女王と呼ばれている。その南アルプスで登山道を切り拓き、山小屋を建て、登山者の安全と南アルプスの開拓のために人生をに捧げた人がいる。「竹澤長衛」、地元では今もその偉業が伝えられ、人々の尊敬を集めている。


その長衛翁の遺徳を偲ぶ「長衛祭」が毎年開かれ、今年は55回目を迎えるのだとか。翌日には仙丈ケ岳への記念登山も予定されていると聞き、迷わず参加を申し込んだ。仙丈ケ岳には昨年も登っているが、雄大な景色と可憐な高山植物に心を癒された思い出がある。


信州への電車の中では、「竹澤長衛物語」を読んだ。地元にいる同級生が送ってくれたものだ。


ボルネオ7番のブログ-竹澤長衛物語


印象深い逸話がいくつも出てくるが、「リーダーとは?」「責任とは?」を考えさせる話が出てくる。1925年(大正14年)7月、長野県知事、梅谷光貞を案内して東駒ケ岳から赤石岳まで大縦走を行なったときのことだ。梅谷知事を始めとする役人が20名、その世話をする長衛翁を始めとする人夫が10名、総勢30名という大人数で山を往く。


ある日、北岳を登頂した一行は700m下の熊ノ平という露営地まで下りてくるが、風雨が強まり、気温が下がってくる。夏山とはいえ、雨の中を歩くと体力を奪われる。しかし、長く留まれば食料が不足する。長衛翁は天気をどう読むか、一人考える。そして、最終的には「天候の回復を待つ」と決断し、2~3日留まることを覚悟する。


しかし、不足する食料をどうするのか。長衛翁は再び一人で考え、結論を出し、役人たちにこう告げる。

長衛翁 「明日から食事を2食にする」

役 人 「全員か」

長衛翁 「いや、人夫は三度ずつ食べさせてもらう」


そして、これを聞いて激怒した役人にこう話す。

「わしらが空きっ腹で万が一事故や遭難が起きたらどうなる。何かがあった時には、わしらは皆様を背負わにゃならんのじゃ。山に来たら山案内人の言うことを聞いてもらわにゃ困る」。


感心したのは、その報告を受けた梅谷知事がこう漏らしたことだ。

「長衛さんの言う通りだ。本当に頼もしい案内人を雇ってくれましたね」。


この逸話を読むと、「自分の責任だ」と思ったときに、私たちは初めて物事を深く考えることができるのかなと思う。更に言えば、何かが起こったときに、自分の責任だと思える人だけがリーダーになれるのかな、とも思う。


(続く)