父は入浴中に、「同期の桜」を好んで歌った。
学徒出陣した父にとり、当時の記憶を辿る思い出深い歌だったのだろうが、それを聞いていた小学生のボル少年にそんな深いことは分からない。歌詞に出てくる「咲いた花なら散るのは覚悟」という一節を何度も聞く内に、「桜の花=男」というイメージを持ってしまった。咲き誇った後、一斉に散り始める桜こそ、男の生きざまを象徴するものだ、と考えたのだ。
今も、昼間に見る桜は男であってもおかしくないと思う。
人と同じように、桜にも幼少期、青年期、そして見事な花を咲かせる成人期があるのだから。
ただ、夜に見た桜が私の考えを変える。(続く)



