静かな口調で始まった講演だが、林君の講演は時に熱を帯びる。


そう、彼は元々熱い男なのだ。もう20年、30年も昔の話だというのに、当時の感激や感情をそのまま、熱いまま心の内に大事に保管している。だから、その一つひとつを取り出すとき、彼の口調は一気に熱を帯びるのだ。


ボルネオ7番のブログ-林2


では、いくつか印象に残ったエピソードを。


●山口良治先生(元伏見工業高校ラグビー部監督)との出会い


高校ジャパンに選ばれ、オーストラリアに遠征する。いよいよキックオフというとき、山口先生が集合を掛け、円陣を組んだ選手たちに手をつながせる。それを見届けた山口先生はこう激励されたという。


「君たちは日本の代表でここにいる。その日本では、君たちのお父さんとお母さん、学校の先生方、そして協会の人たちがみんな、君たちが勝ったという報告を待っているんや。さぁ、行って来い!」


多感な林選手は感涙に咽びながらグランドへと飛び出したという。その様子が目に浮かぶようだ。その山口先生も、ゲームで大敗したときには容赦なく、しかし理詰めにこう叱責されたという。


「同じ高校生が同じ人数でラグビーをしたんやろ。恥ずかしくないのか!」


熱血漢の林君は、さぞかし落ち込み、その後、悔しく思ったことだろう。そういう林君の心を揺さ振った山口先生も、やはり熱い方だったのだろう。



●岡 仁詩先生(元同志社大学ラグビー部監督)の叱責


大学4年生のとき、林君はキャプテンとしてチームを率いる。前年、大学日本一となった同志社は連覇を目指し、大学選手権準決勝で明治と対戦する。しかし、ゲームは思わぬ展開となる。同志社の選手が一人、退場処分となったのだ。


善戦空しく同志社は破れ、林君は大学生最後のシーズンを終える。さすがにその夜は心の整理が付かず、少し深酒してしまった林君はゲームの疲れもあり、入浴中に身体が動かなくなってしまう。幸い、後輩の一人がそれを発見し、何人かで巨漢の林君を救い出して事無きを得たらしいが、定宿ではちょっとした騒ぎになったらしい。


翌朝、頭痛で目覚めた林君を岡先生が叱る。

「ここは一般の方も宿泊されているホテルや。それやのに、たかがラグビーに負けた位で大騒ぎして、他のお客さんに迷惑を掛けて恥ずかしないんか。ラグビー以前に、社会のルールをちゃんと守れ!」


岡先生は人の気持ちに敏感な方だ。林君や他の4年生の気持ちを痛いほど分かっておられたに違いない。だからこそ、「いつも通り」叱らねばならない。岡先生は一緒に泣きたい気持ちを抑え、いつも通り叱ることで選手たちを励まそうとされたのではないか。私も岡先生の教え子だ。この話はグッと胸に迫るものがあった。



●「涙が必要です」(林君の言葉)


彼は言う、「今の時代は乾いた時代やと良く言われます。しかし、乾いたらどうなるか、ちょっと考えて下さい。おしぼりは湿っているから重い。しかし、それが乾いたらどうなりますか。軽くなりますよね。乾くと軽くなるんです。だから命が軽くなる。人生も軽くなる。それで簡単に命を奪ったり、粗末にしたりという事件が増えるんです。では、どうやって乾いたものを元に戻すのか。涙しかありません。感動して流す涙、それが必要なんです」


素晴らしい言葉だった。

林君、ありがとう。


ボルネオ7番のブログ-花