今朝のことだ。



渋谷駅を出て交差点に向かおうとすると、前方に白い杖を持った男性が立っておられる。歩くスピードを落として、その方を迂回して通り過ぎようとしたら、「すみません・・・」という囁くような声が聞こえた。どうやら、その男性の声のようだ。一瞬迷ったが、近寄って声を掛けた。


「どうされました?」

「早大正門行きのバスに乗りたいんです。バス停はどこでしょう?」

「私、知ってます。そのバス停から間違ったバスに乗っちゃったんです」

「そうでしたか。どう行けばいいですか?」

「ご案内しますよ」


男性は、話す間に私の右肘の辺りを左手で持たれ、私より少しだけ後ろに立たれた。そうこうする内に、横断歩道の信号が青になった。


「青になりました。渡りますよ」

「はい」


横断歩道の途中まで来たとき、紳士が突然こうおっしゃった。


「先日、駅のホームから転落した目の不自由な夫婦・・・実は、友人でした」

「えっ!?」

「まだ42才でした。いつもと違う駅に降りてしまい、勝手が違ったのでしょう」

「そうでしたか、お気の毒です」


バス停に着いた。


「着きました。間違いなく、ここに早大正門行きのバスが来ます。大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です。お急ぎのところ、ありがとう。助かりました」


その方はバス停に並び、私に向かい頭を下げて下さった。


しかし、そのとき私が思ったことは、「目が見えるというのは、大変な能力なんや。せやのに、パソコンばっかり見ていてええんやろか。自然の雄大さや、人の表情の美しさをもっと見ないとアカンのとちゃうやろか」という反省であった。