渋谷にある小さな映画館で、チョン・テセのドキュメンタリー映画「TESE」を鑑賞した。
いまでこそ北朝鮮代表のエースストライカーとして当たり前のように君臨しているが、じつは韓国代表も日本代表も選ぶことができる立場にあった。そして同じように韓国代表と日本代表を選べた李忠成が日本を選び、マスコミから注目され、日本中から期待を背負うようになった状況について、「正直うらやましい」とまで言っていた。
それなのに、いばらの道とでも言うべき北朝鮮代表を選んだ理由は、「背負うものの大きさ」だったのではないかと、映画を通じて思わされた。在日朝鮮人として、日本人の2倍も3倍も努力しないと周囲から認めてもらえなかった「宿命の大きさ」。そして、宿命に打ち勝ったスーパースターとして、何十万人の同胞から一心に向けられる「期待の大きさ」だ。
イタリアの至宝ロベルト・バッジオも自らのフットボール観についてこんな言葉を残している。
「思いついた選択肢の中で、一番難しいプレーを選ぶようにしている」。
人々を魅了し、感動を生み出すのは、背負うものの大きさによるのかもしれない。