2016年11月世界相場の風林火山 | 香港IFA玉利の海外投資夜話

2016年11月世界相場の風林火山

疾きこと風の如く。

静かなること林の如く。

侵掠すること火の如く。

動かざること山の如く。

2016年11月9日の
米国大統領選挙でドナルドトランプが
勝利してから米国のダウは19,000を
超え史上最高値水準で推移している。


米ドルの為替も
多くの通貨に対して
切り上がって来ており
対日本円レートは113円台で推移、
これは今年2月頃と同じぐらいの水準だ。


夏頃は一時100円を超える
円高水準に足を踏み入れたので
随分円安になったという印象があるが
最近の動きだけにとらわれることなく
年初はまだ120円台だったことも
思い出しておきたい。


主要通貨の中では
10月に急落したポンドが
その米ドルに対しても折り返して
切り上がってきているのは興味深い。


161126


逆に日本円は
どの通貨に対しても下落しており、
その作用もあってか日経平均株価も
18,000円を超え年初の最高値に向かって
まっしぐらに上昇しているという形。


他には
中国の上海指数が上昇しているのが
目立っているのはそれぐらいで、
他の主要市場は米国大統領選挙前と
大体同じような水準で推移している。


特に日経平均は
大統領選当日に暴落し、
翌日は前日の下落幅以上に戻って
その後上昇を続けているので
ほとんど米国と日本の株式市場の話しか出ない
国内でニュースを見ていると
トランプ効果で世界の株価が
活況になっている錯覚に陥るが
実際は必ずしもそうではないということである。


米国株式はもともと
今年初の急落からいち早く復活して
史上最高値を狙っていた。


まだ就任していないトランプが
勝利宣言でこれまでとは打って変わって
まともな態度だったので安心感が広がったとか、
大規模インフラ投資や減税に言及したことを好感して
市場に良い影響を与えたという要素もなくはないだろうが
元々今年のアメリカの経済は
好調だったということも憶えておきたい。


日経平均の上昇は
米国市場に引っ張られる
性質と円安の作用だろう。


さて実際にトランプが
米国大統領になったらどうなるか?


選挙前に
まくし立てていたまんまの
過激な移民政策や極端な保護主義に
走るようなことは流石にないように思えるが、
基本的に支持者に寄り添ったスタンスになり
グローバリズムよりはナショナリズムの方向に
進む見込みが高い。


近年急速に
経済のグローバル化が進んで
ヒトとマネーが国境を超えて
どんどん移動するようになってきたが、
パナマ文書で広く知られるようになった
海外での節税や人件費の安い移民の流入など
どちらかというとそれは富裕層とか
資本家に利する一方で一般庶民には
逆に悪影響が少なくないことが明らかになってきている。


目の前に有利な方法があり
それが違法でなければ余すところなく
利用するのは合理的な行動である。


そうして資産を
海外に配置できるような富裕層の
国境を超えた経済合理的な行動が
本来の国家の収入を減らし、
逃げ場のない国内の一般庶民への
増税に跳ね返ってくることもあっただろう。


富裕層はますます富み、
グローバル化以前の中間層は
より低い位置に押し下げられた。


英国の国民投票で
EU離脱派が勝利したブリグジットや
今回のトランプ勝利の背景には
こうした庶民の不満があることは明らかなようだ。


ただ一方では、
まだどこか落ち着かない。


英国のメイ首相は
来年3月にEUに対して
離脱の通知をすると言っていたが
英国高等法院はそれをするのに
議会の承認が必要だと判決を下した。


英議会は確か
EU残留派の方が多かったはずである。


そしてここに来て、
米国でも正式に大統領を決める選挙人投票の前に
選挙人に対しての懐柔活動やいくつかの州で
票の数え直しが行われるかもしれないなどの報道もある。


元々はいずれも僅差の結果、
半数や賛成、半数は反対の状態なのである。


むしろ大統領選は
単純に現時点の得票数だけ見ても
ヒラリークリントンの方が
トランプのそれより多いのである。


多くの人が
予想しなかったこれらの結果は
歴史的な珍事と言ってもよいだろう。


その珍事が
また覆ることになれば
その出来事の希少さは何と言うのだろうか?


過ぎてしまえば
笑い話にもなるだろう。


だが、
それによってマーケットは
いちいち激しく動くから厄介なのである。


風林火山の意味が身に沁みる今日この頃。


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