ロシア通貨危機の余波〜LTCMの破綻(2) | 香港IFA玉利の海外投資夜話

ロシア通貨危機の余波〜LTCMの破綻(2)

「異なる種類や満期を持つ債券の
利回りの格差は一時的に拡大しても、
時間が経てばいずれは元に戻る」

という市場原理を利用し、
ペアを組んだ債券のうち
利回りの高くなった方を買い、

利回りの低くなった方を
空売りしておいて双方の利回りが
元に戻ったときに反対売買をして
二方面から利益を得る。

LTCMはその取引を
高速で数多くおこなうと同時に
金融機関から融資を獲得し、
巨大なレバレッジをかけて
運用していたのである。

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そんな1997年のこと、
アジアにはじまった通貨危機が
ロシアに飛び火し、
ついにロシアが短期国債の
デフォルトを宣言するに至って、
世界中の投資家のマインドに
劇的な変化が起こった。

信用の低い債券も安くなりすぎると
さすがに買い戻され、
信用の高い債券も高くなりすぎると
さすがに売られる、

というが
通常の環境での市場原理だが、
この世界的な信用収縮の中で
マネーはより信用の高い安全な債券に
一方通行で集まってしまうように
なったのである。

LTCMにとっては
空売り(ショート)していた
優良債権の価格がどんどん上がり、
買い待ち(ロング)していた
信用の低い債券がどんどん安くなってゆく
という股裂き状態になってしまった。

これまで
二重でリターンを得ていた取引が一転、
両方面から損失が拡大してゆくことになったのだ。

ところでこのLTCMは
ウォール街の伝説のトレーダーと呼ばれた
ジョンメリウェザーが立ち上げ、
マイロンショールズとロバートマートンという
ノーベル賞学者が取引のシステムを作り、
アメリカの中央銀行に当たるFRBの元副議長が
経営に加わっていたドリームチームのような
会社であった。

その信用のうえで
40%/年以上のリターンを
二年続けて記録していたので
大手金融機関から莫大な額の融資を受けていた。

破綻時には資本金47.2億ドルのLTCMが
1,260億ドルの運用をしていたと言われる。

日本円で12兆円程度。
※2013年4月時点のレートで換算

日本の国家予算の
実に8分の1に当たる資金を
一金融会社が運用していたということになる。

LTCMの破綻は
銀行の連鎖倒産を生み、
世界経済を恐慌に陥れるほどの
インパクトがあったため、

FRBが主導で
民間15銀行にLTCMへの融資をさせ、
ゆっくりと解体してゆくという
異例の措置を採って世界金融危機の回避に務めた。

ちなみにLTCMは
ロシアのデフォルトを100万年に
3回程度起こる確率と試算していたそうである。

可能性はゼロではないが
まずありえないことが起こったということか。

言い訳以外の何ものでもないが。



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