悪原至(パーカッション)
浅原由香(オーボエ)
佐藤祐介(ピアノ)
 
安倍圭子/マリンバ・ダモーレ  
アスケル・マッソン/プリム
加藤昌則/フロフレイマ
ブルーノ・マントヴァーニ/モワ・ジュ 
福士則夫/シリカ  
蒋斯汀/トゥ・カム・イントゥーフォーカス
ヤニス・クセナキス/ドマーテン  
(アンコール ギジョ・エスペル/ーザンパーあなたの居ない静寂に耳を傾けて.)
(曲名を探していてちょうど見つけた)
 
1年半振りに国立オリンピック記念青少年総合センターに来て初めての小ホールで聴いた、悪原至の4回目のソロリサイタルは現代曲ばかりを取り上げた野心的なもの
マリンバ、スネアドラム、ビブラフォンのソロのほか、ライブ・エレクトロニクスによる演奏やピアノ、オーボエ奏者のゲストを迎えての演奏があった
普段なかなか耳にすることのできない打楽器作品をトークを交えながら紹介したが、超絶技巧は見ものだった
 
「マリンバ・ダモーレ」はマリンバ独奏、安倍の曲はいくつも聴いているのでこんなもんだと軽く流す
まあ、マリンバという楽器の立役者ではあるが
 
「プリム」はスネア・ドラム独奏
曲名は「素数」からとられているが、その通り曲は一貫して8分の11拍子であり、モチーフは1小節44個の32分音符のうち1と素数に打音が配置されたものとなっている
リズムパターンはスネア・ドラムの様々な奏法と合わさって、変幻自在となっていく
ここでは単調だが速いパッセージを正確に、適度なディナーミクで演奏する悪原の技が際立った
 
「フロフレイマ」はビブラフォン独奏
流れている時の流れを一枚の写真で切り取ったかのような静謐が特徴的な曲
マリンバとは異なった硬質な音と、その長い残響が記憶に残った
 
「モワ・ジュ 」はマリンバ独奏の超絶技巧曲
この曲では旋律は意識されず、音高のみではなく強弱やフレージングといった要素の並列という面に重きを置いて作られている
まさに超絶技巧の万華鏡のようで、奏者は右に左にと絶えず飛び回っていた
 
後半はピアノとビブラフォンによる「シリカ」から
当日午後福士則夫に「シリカも演奏するようですね」と連絡したら、「はい昔、高橋悠治、アキさん、藤井一興などと、菅原淳、吉原すみれさんなどのコンビでずいぶんやりましたが、若手も最近やりますね。」との返事が来た
シリカとは乾燥剤のシリカゲルの成分である二酸化ケイ素のことであり、この曲はピアノ罹災tルのために書き始められたが、「冷たく、硬質的で、乾いて、細かく、輝いて、不規則的で、狭い音程の中ではじける」といった特徴を持つ楽器としてビブラフォンが加えられたという
シリカの様々な形体、性質に変化する性質に合わせて曲も部分部分で大きく異なる
両者の切れ目のない単調ともいえる16分音符のビートを刻み続けるパートで始まり、いつまで続くのかと固唾をのんでいると、音の残響が発生し、リズムがあいまいとなり、両者は有機的に絡み合い、様々な表情を見せる
曲の持つ(展開の)意外性と、ピアノの弦を押さえるなどの特殊奏法が楽しめた
両者の表現力は高いレベルにあったと思う
 
「トゥ・カム・イントゥーフォーカス」はスネア・ドラムとライブ・エレクトロニクスによる曲
スネア・ドラムの演奏と、打撃音にピッチを与えるカープラス・ストロングや、持続音を作るインフィニット・リバーブなどのイブ・エレクトロニクスによる拡大で異なった音響構造が生み出されている
最初はアコースティックに近かった音響はだんだん創作された音響オブジェガ拡がっていき、電子音楽の様相を呈した
悪原のスネア・ドラムはここでも正確な音圧とリズムを刻んでいた
 
圧巻は最後のオーボエと打楽器の二重奏「ドマーテン」
クセナキスのパーカッション作品の中でも演奏機会は少ないというが、それはオーボエの特殊奏法を駆使した演奏と、パーカッシヨニストはひとりでコンガ、ボンゴ、バスドラム、ビブラフォン、シロンバ、銅鑼を演奏しなければならないという演奏難度の高さに由来する
片手で1台ずつの鍵盤楽器を同時に操る様は、さながらビル・エヴァンスの“FROM LEFT TO RIGHT”のジャケット写真のようだった
始まりは「プレイアデス」を想起させる部分もあったが、オーボエの微妙な音程や音色の変化が線に、打楽器によって刻まれるビートが点となり、両者の対比が高度な数学的知識を活用したクセナキスの音の世界を形作って行った
オーボエはブレスが少なく、息が続くか心配になりそうなうえに多様な特殊奏法が要求されたが、獅子奮迅のパーカッションとともに見事な演奏だった
 
アンコール曲はマリンバの実に柔らかな音を集めて紡いだような曲で心地良かった
 
この頃現代音楽を聴く機会がやたらと多い気がするな
 
 
 
 
 
 
 
シモン・ボレノ(オルガン)
きりく・ハンドベルアンサンブル
 
J.S.バッハ/トッカータ ハ長調
      クリスマスの歌によるカノン風変奏曲「高き天より、われは来たり」
ピエール・パンスマイユ/プロローグとさまざまなノエル
J.S.バッハ/目覚めよ、と呼ぶ声あり
ヴィットーリオ・モンティ/チャルダッシュ*
J.S.バッハ/主よ、人の望みの喜びよ**
アドルフ・アダン/オー・ホーリー・ナイト**
シャルル=マリー・ヴィドール/オルガン交響曲 第5番より トッカータ
クリスマス・メドレー
(アンコール おうまれだイエスさまが~讃美歌第二編より)**
*   ハンドベル
**オルガン&ハンドベル
 
すみだトリフォニーのパイプオルガンとハンドベルのクリスマス・コンサート
ステージ下手のスクリーンに映し出された映像で、4,735本のパイプ、三段の鍵盤、二段の足鍵盤、フイゴによる、バッハゆかりのドイツイェームリッヒ社製のパイプオルガンの、複雑な構造と奏法が良く分かった
 
これまでパイプオルガンについてはあまり知らなかったが、映像で初めて低音域は足鍵盤で操作していることや、強弱用の大きなアクセルのようなペダルがあること等を知った
中でもたドライヴィング・テクニックのヒール&トゥのような奏法にはビックリした
3階席2列目中央だったので、全体も良く見渡せた
スコアは良く見えなかったが三段譜のようにも思えた
譜めくりも移動が大きくなるので大変だ
 
シモン・ボレノは9月にフランスから来日し札幌コンサートホール専属オルガニストになったばかりのまだ26歳
カタコトの日本語でのあいさつと曲紹介(途中原稿をなくして英語になった部分も)
しかし、演奏は迫力があった
 
曲は前夜のB⇒Cのように、バッハから現代曲まで幅広かったが、オルガン曲ではやはり19~20世紀にオルガニストとして活躍したヴィドールのオルガン交響曲第5番第5楽章が光っていた

他方、ハンドベルの演奏は予想をはるかに上回る超絶技巧ものだった
ハンドベルは17世紀にイギリスで教会のタワーベルの練習のだめに生まれたということで、この日は500gから5kgのものが使用されていた
通常の曲はスコアの音を一旦ばらしてベルの音に合わせて一から再構築するようにして作って行くそうだ
柔らかな音だけでなく、ヴィブラフォンのような音も出ていたが、まあ構造を考えればある意味似たところがあるかもしれない
6、3、7人での演奏だったが、マレットを使うこともあり、最後には吊り下げ式のベルやヴィブラフォンの一種のようなものも使われていた
奏法についてもいろいろ説明があったが、下記に詳しい
で何と言っても「まさかハンドベルでやっちゃうの?」と思っていた“チャルダッシュ”は圧巻だった
 
クリスマス・メドレーの途中では、オルガンのトップの星のような部分(名称はよく聞き取れなかった)が回ってウィンドベルのような音を聞かせた
 
後半はクリスマスツリーやサンタやトナカイのライティングで気分を盛り上げた
 
75分ほどで1500円は安かったな
 
スクリーンにパイプオルガンの様々な「顔」が映し出される(開演前撮影)
 
ロビーも駅へと向かう途中に見えるスカイツリーもクリスマス
 
 
 
 
 

高野麗音(ハープ)

森川公美(アルト・フルート)*

 

オペラシティリサイタルホールで “B→C (バッハからコンテンポラリーへ) 高野麗音”を聴く

旬のハーピスト(と言っていいだろう、円熟ではなく)がいろいろな奏法を駆使して、様々な時代の多彩な曲を紡いだ

 

J.S.バッハ/フランス組曲第6番

コンスタン/アルバリゼ

ダマーズ/シシリエンヌ・ヴァリエ

台信亮/円柱―ハープのための

武満徹/海へ―アルト・フルートとハープのための*

ホリガー/前奏曲、アリオ―ソとパッサカリア

サルセード/バラード

フォーレ/即興曲

(アンコール サルセード/夜の歌)
 
6月の景山梨乃のリサイタルではペダルに注目していたが、今回はちょうどよく見える席だったこともあって運指に注目した
一般に優雅な印象を持たれるハープだが、間近にその演奏、特に特殊奏法を駆使した現代曲を演奏するのを見れば、とんでもないということがわかる
醸し出される音色は多彩で、特に高中低それぞれの音域で大きく質が異なることを再認識した
また、曲間ではチューニングに労を要していた
 
演奏は困難を極めるものの、結論から言うと、この日の演奏で感じたのはハープは現代音楽に向いているのではないかということだった
 
しかし、バッハにおいては確かに白魚のような左手がたよとう様は優雅と行って良かった
 
コンスタンはポルタメントが多用されていたが、叩きつけるような硬質な高音が多かった
正直どうやって出しているのかわからない音も多かった
 
ダマーズは20世紀後半の曲であるにもかかわらず、アルペジョが彩るハーモニーと優雅なメロディーで聴きやすい曲だった
 
台の曲はハーモニクスやさまざまな特殊奏法が駆使されていたが、中間部の一旦手が停まった時の残響が印象的だった
 
武満作品は耳になじんでいて次の音が予想できるので、何ら抵抗感なく入ってきた
アルト・フルートの特殊奏法もまじえた息の長いモチーフをハープが細かい音の粒で支え、表情に富んだハーモニーを添えていたが、尖った緊張感がなく心地よかった
 
ホリガーの曲は感覚的には非常に現代音楽らしい音で構成されていたが、ある意味最も激しいと言っても良かった(叩く、はじくといったことではなく)
 
サルセードはいかにもハーピストが作った曲といった感じで、曲自体も演奏する姿もダイナミックだった
 
フォーレは繊細な装飾が施されていたが、聴いていてこの夜もっとも優雅な曲ではないかと感じた
 
アンコールの「夜の歌」は共鳴胴を叩くなどの特殊奏法とクラシック奏法が混ざった素敵な小品で、一番気に入った曲になった