4時間以上にわたる重厚長大な高級学芸会(笑)“楽理科研究演奏会”に付き合う
演奏科ではないのでそれなりの演奏だったが(中には優れた演奏あり)、鵺のような楽理科の幅広い企画と詳細なプログラムはさすがだった
フランスを拠点に世界各地でプロジェクトを進め、現在幅広い注目を集める気鋭の建築家田根剛の田根の密度の高いこれまでの活動と、建築は記憶を通じていかに未来をつくりうるかという挑戦を紹介した個展
「Archaeology of the Future―Digging & Building」と題して、場所をめぐる記憶を発掘し、掘り下げ、飛躍させる手法と、そこから生み出された〈エストニア国立博物館〉、〈古墳スタジアム〉といった代表作や最新プロジェクトを大型の模型や映像などによって体感的に展示していた
https://www.operacity.jp/ag/exh214/
「田根にとって建築とは、膨大な情報をひとつの具体的な建物に落とし込む作業でもある。場所という環境から読み取られた情報に建築という形を与え、再び環境の一部へと戻す。この循環的なプロセスに田根の建築の特色があると言える。」(集英社新書プラスインタビュー)
田根剛は、フランスを拠点に世界各地でプロジェクトを進め、現在幅広い注目を集める気鋭の建築家
20代の若さでドレル・ゴットメ・田根(DGT.)として〈エストニア国立博物館〉の国際設計競技に勝利し、選出から約10年の歳月を経た2016年秋に同プロジェクトが竣工を迎えるなど、国内外の注目がさらに高まっている
また、2012年に行われた新国立競技場基本構想国際デザイン競技(ザハ・ハディド案選出時)に参加し、11人のファイナリストに選ばれた〈古墳スタジアム〉は幅広い層に知られるきっかけとなった
2017年のDGT.解散後は40人ほどの事務所 Atelier Tsuyoshi Tane Architects をパリに設立し、活動の場をさらに広げている
【参考】
『記憶』は未来をつくる『原動力』:建築家・田根剛インタビュー 長井美暁(新潮社フォーサイト)
https://www.huffingtonpost.jp/foresight/tsuyoshi-tane_a_23600683/
https://www.huffingtonpost.jp/foresight/tsuyoshi-tane2_a_23600684/
「その場所には何があったのか―― 場所の記憶を掘り起こし、未来につなぐ建築」(集英社新書プラス)
https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/interview/tane/992
https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/interview/tane/993
https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/interview/tane/995
「日本の若手建築家」(石川文化振興財団)
https://sites.google.com/a/ishikawafoundation.org/architect/home/vol-12-tian-gen-gang-qian-bian
https://sites.google.com/a/ishikawafoundation.org/architect/home/vol-13-tian-gen-gang-hou-bian
メンバー向けの解説「TALK TO MEMBERS」を含め3回観たが、やはりキュレーターの野村さんの解説で大きく理解が深まり、タイトルの意味の「過去に問うて未来をつくる」ということが良く分かった(写真撮影可、断りなき引用は展覧会ホームページから)
オペラシティ・アートギャラリーで建築展をやるのは4年振りだそうだが、旬の建築家として構想は6年間温めてきたという
田根は徹底したリサーチを形にしていく
最初の部屋には壁にたくさんのツールが貼られている
すべては記憶を発掘するめ
12のキーワード、MULTIPLICATION はいかにもネット世代でセンスが良い
彼はこうしていつも自分が求めるものを集め、脈絡を作って行く
収集する時間は半端ではない
この部屋の照明も田根の発案でLEDに変え、可動式だそうだ
田根がこの住宅を「A House for Oiso」と命名したのには深い意味がある。「大磯にある住宅」(A House in Oiso)ではなく、「大磯のための住宅」、敢えてその表現にこだわったのは、住宅という私的な建築を公共性へと繋ぐことを意図したからだという
「日本の住宅の場合は、個人の施主と建築家の共同作業でほとんどすべてが成立してしまいます。建築家の考えと施主の要望のどちらを優先させるかはケースバイケースですが、いずれにせよ個人の発想や趣味がそのまま建物に反映されてしまいます。これでは住宅を通じて町をつくることには繋がりません。例えば建蔽率さえ守れば、敷地の中で建物のない部分の土地は前庭にしても、駐車場にしても、あるいはバックヤードにしても自由です。町の景観の良さは統一性の問題なので、自分の建物でどんなに景観をよくしようと思って設計しても、隣の建物が変わると町がどんどんバラバラになってしまうわけです。そこで大礒の場合は、建蔽率を考える際に、建物以外の部分はすべて庭にして、大磯の森に返すというコンセプトを決めました」
田根が挙げるもうひとつの理由は、大都市圏での建設ラッシュだ
土地の価値は生み出す富の大きさで決まり、建築には富を最大化することが求められる
建設業は拡大再生産を続け、そのスピードは加速している
「日本では建築家には建物のデザインばかりが求められますが、最も重要なプロジェクトが生まれる前の構想段階に関わったり、計画全体を議論する時間の余裕は与えられていません。今の社会では建築は必要とされず、建設業が経済性を優先し、土地を次々と更地にして前に進んで行くという感じがします。僕は20歳で日本を出てからの十数年はどっぷりとヨーロッパでした。それがこの 4、5年は日本に帰ってくる頻度が増えて、帰ってくる度に何かおかしいと感じています。このままのやり方ではまずいけれど、これを変えるのは不可能かもしれない。そう諦めそうになるのですが、僕らの世代が諦めたら本当に駄目になるので、諦めてはいけない、闘い続けたい思っています」」
https://shinsho-plus.shueisha.co.jp/interview/tane/992
「たとえば今年、世田谷区の等々力に「Todoroki House in Valley」という住宅を作りました。そのときの依頼は、基本的に「等々力に家を作ってほしい」と、ただそれだけです。でも、物事には意味がある。そこで「等々力」という意味を解体していくと、ここには渓谷があり、湧き水があり、という地形や地質学的な特徴が見えてくる。そこで、世界各地の渓谷の環境を調べるわけです。
ジメジメした環境ゆえに独自の植生があり、多摩川が近いので上空にいつも風が吹いている。木がずっと揺れている光景が印象的でした。それで今度は、いろんな湿地帯や、拡大解釈で乾燥地帯も調べる。……するともう、止まらないんです(笑)。」(CINRA.NET)
《 弘前市芸術文化施設(仮) 》
青森の城下町・弘前に2020年度を目指し、現代美術館「弘前市芸術文化施設(仮)」の建設が進められている
明治時代のレンガの建物「吉野町煉瓦倉庫」を、現代美術のクリエイティブ・ハブへと生まれ変わらせるプロジェクトである
元々はリンゴの果汁からシードルをつくる工場だったが、耐震構造化のためにレンガを生かしつつ鉄骨を通していくことになっている

廃棄物再生工場を京都発祥のショップの複合施設にするプロジェクト
そのコンセプト通り、廃棄物を集めて作るファサードは廃材から寄木を作って再生している
映像がその製作過程を分かりやすく説明していた
そばには金だわしの模型があった
また、田根は建築だけでなく様々な展覧会や店舗のディスプレイや舞台美術を手掛けている
ここでは短いながらも密度の高い2004年以降100作品以上の田根の全活動を、30mのコリドールを使ったタイムライン(年表)として総鑑していた
中でもシチズンとは長い付き合いだそうで、時計の地金を用いたディスプレイなどがあり、映像で紹介されたその移ろいも面白かった
また千聡やとらや(パリ店のファサードなど)についても様々なものを手がけていた
建築展は、話題になっている間に、「Social Engaged or Socialized」とでもいうべき活動として、メディアにとっても便利なのタイミングとして開催した
人も物も消費しつくすという世相への批判といった面もあるという
学生時代に法学部に入ったのを後悔してせっせと工学部の都市工学や建築の講義に通い、退職後も建築デザインを学んだがものにならなかった人間にとっては、やはり建築家はいいなとなんともため息が出るようだった
模型や映像で分かりやすくなっていたうえ、企画したキュレーターによる解説を聞き、3回も通い、文献も調べたため、近年になく理解を深た展覧会だった