ジョナサン・ノット(指揮)
甲藤さち(フルート)
水谷晃(コンサートマスター)
ヴァレーズ/密度21.5
アメリカ
R.シュトラウス/英雄の生涯
ヴァレーズ2曲とリヒャルト・シュトラウスという重たいプログラムだが、ヴァレーズの2曲の間に休憩はなく、3年前の定期演奏会でのバッハ(ストコフスキー編)の「甘き死よ来たれ」とリヒャルト・シュトラウスの「ブルレスケ」を演奏した時を想起させ、ノットらしい趣向だと思った
因みに今回は「続けて演奏されます、拍手はお控えください」のアナウンスのみであったが、3年前はあらかじめ次のような注意が喚起されていた
「お客様は、14:00までにご着席くださいますようお願い申し上げます。
①指揮者、ソリスト、オーケストラは、メトロノームが動いている中、入場し、そのまま最後のメトロノームが止まるまで待機いたします(入場の際の拍手はご遠慮下さい)。当日は開演ベルも鳴らさず、時間が来ましたら入場を制限させていただきます。早めのご着席をお願い致します。
②メトロノームの音が止むと、すぐに「バッハ/ストコフスキー:甘き死よ来たれ」の演奏が始まります。
③「バッハ/ストコフスキー:甘き死よ来たれ」の演奏終了後、続けて「リヒャルト・シュトラウス:ブルレスケ」を演奏致します。」
終演後多くのメンバーが「時間は短かったのに疲れた」と言っていたのがわかるような気がする
ヴァレーズの「密度21.5」は先だっての若林かをりのレク&デモで予習済み
世界で初めてプラチナ製フルートを製作したジョルジュ・バレールというフルーティストの移植に書かれた作品で、曲名はプラチナの比重が約21.5g/㎤であることに由来する
暗くなったステージ上で、ソリストの首席フルートの甲藤さちにスポットが当たる
この曲は俗に「アンチ・シランクス」とも呼ばれるが、ヴァレーズにしては柔らかで滑らかな音で滑り出した
4分程の小品だが、冒頭のモチーフが音程を変えて繰り返された後、キー・クラップの特殊奏法特殊奏法超高音域によるノイジーな展開をみせる
甲藤はこのような部分でも柔らかに音を紡いでいった
彼女はその後も全体通して活躍した
曲に関していうと、「シランクス」以降初めて無伴奏フルートのための作曲において新たな一歩を踏み出したと言われるが、「一歩」をどう捉えるかは別として、自分としてはこの2曲よりもその間に作曲されたイベールのフルートのための小品の方が好きである
「アメリカ」はヴァレーズがアメリカに移住して最初に書いた、事実上の「作品1」に当たる作品である
2つの打楽器群とサイレン付きの管弦楽曲で、非常に大きな編成となっている(初稿版はさらに巨大な編成だったという)
静かなアルト・フルートの演奏で始まったが、もう一人の首席の相澤政宏も加わった贅沢なフルート陣の活躍し、いくつかの楽器群を重ねてモチーフが繰り返され、やがてサイレンが登場して曲は高揚していく
神秘的な部分を過ぎると音響の風合いが様々な国のものとなっていく
アルト・フルート、ブラス、パーカッションが印象的な曲だが、相澤は極めて安定しており、管打楽器の破綻もなく、東響はノットの指揮のもとで見事な緊張感のある演奏を聴かせてくれた
R.シュトラウスは昔から苦手意識が強いのだが、この数年でそれが和らいできた
それも様々なオーケストラの生の良い演奏を聴くようになったからであろう
この日の「英雄の生涯」またしかり
リヒャルト・シュトラウスの最後の交響詩だが、副題に「大管弦楽のための交響詩」とあるように、演奏するには105名から成る4管編成が必要とされる
また、技術的にもオーケストラにとって演奏困難な曲の一つに数えられており、オーケストラの実力が試される曲としても知られているが、この日の東響はまたしても堂々たる演奏
序盤と終盤のフルート群を中心とする木管とホルンを中心とするブラスの活躍も見事だったが、コンマス水谷晃のヴァイオリンの音色が実に美しく、ソロをとったホルンの上間善之、イングリッシュホルンの最上峰行も素晴らしかった出来だった
またしてもノットと東響の幸せな蜜月は極上の時をもたらした