『あや』 

 

祈りの雫になった

「あや」

虹を創るその体は

空のかなたでお日様をため込んでいた

闇に滲みて行き

地の底に棲むものたちに光を手わたしていく

代わりに闇を引き受けるのが君の仕事だったね

雨と共におり

水蒸気に乗って帰ってゆく

「あや」

その名前を呼んでみる

「あや」

雨のなかに隠れてしまったその名前を呼んでみる

忘れてなんかいないよ

あの日の約束 その時の笑顔

祈りの雫にもきっと融けている

光の記憶

「あや」

空のかなたにあったその名前を

呼んでみる

終末の君はとても深い笑顔で

答えのない問のうえを歩いていたね

あの時のまなざし

雲で描いたあれは何だったの?

溜息で吹き消したあれは何だったのさ?

「あや」

空のかなたに消えたその名前を

呼んでみる

祈りの雫になった

君の名前を呼んでみる