放射線治療が終われば、仕事が始まる。

約3ヶ月のモラトリアムは終わりを迎えた。


行きたいような、行きたくないような。

ううむ、「行きたい」が3割か4割、残りが「行きたくない」といったところか。

根が怠け者なので、行きたくないが若干勝つのは仕方のないところである。行きたい気持ちが存在するだけで良しとしよう。


復帰1日目の朝、ステラおばさんのクッキーの箱を抱えて、常より少し早めに職場に向かった。


初めましての方も、改めてよろしくの方も、皆、温かく迎えてくださる。

「待っていたよー」と言っていただけると、本音がどこにあろうと、やはり嬉しいものだ。

病気休暇中のお礼と、迷惑をおかけしたお詫びと、再会の喜びを順番に伝えながら、クッキーを配り歩く。

なお、手土産にステラおばさんを選んだのは、知名度と、ほどよいお値段と、自分でも食べてみたかったという好奇心による。


初日のため気を遣っていただいたのか、最前線の接客業務は免除されていたので、裏方業務をこなしながら、空いた時間で業務端末を開いた。

IDとパスワードは、まだ指が覚えていた。


さて。

おう…。

未読メール、500件。他、通知が諸々。


不在は周知されていたため、ほぼccで届いているもので返信は不要なのだが、目を通さないわけにはいかない。業務連絡を適当にスルーして後で困るのは自分である。


しかし、500件か。わたしの脳のシナプス的なやつ、保つかしら。老眼の始まった目にも辛い。


とりあえず、今年度の分は、今日のうちに、さらりと読んでしまおうと決意する。おおまかにでも把握しておかねば、今すぐの業務に支障が出ること請け合いだ。

がんばれ、わたし。やればできる子。たぶん。


まとめて読んでも集中力が保たないのはわかっている。他の仕事の合間合間に、20件ずつ目を通す。だいたい20件を超えるあたりで、脳がふわっとしてきて、目が字面を追っているだけになったな、という感覚が出るので、違う作業を挟む。


しかし、こんなポンコツな集中力で、学生の頃はよく勉強ができていたな。いや、できてはいなかったか。残念ながら、記憶のある範囲では、わたしはずっとこんな感じだったかも。

集中力がないわけではないと思うのだが、持続時間の短さと根気のなさには、昔から自信がある(趣味の読書は除く)。そこに最近は加齢が拍車をかけているとみた。

困る…。まだまだ働かなくてはいけないのに、この衰えの加速を止めるには、どうしたらいいの…。やはり気合いで宝くじを当てて、不労を目指すしかないのか。今年のサマージャンボは買おう。


いつものように余計なことを考えつつ、そこそこ働き、メールの海に溺れ、同僚と歓談していると、気がつけば退勤時間が近づいていた。

なんとか無事、1日目は終わったようだ。


おそらく、しばらくは気を張っているため、体も心も大した不調は感じないと思われるが、1回目の手術の後、復帰して2週目あたりから体の疲れが顕著だったこともある。

油断せず、病み上がりであることを忘れずに、自分に優しく過ごしていきたい。