放射線治療16回目。診察日である。

照射後、先生にご挨拶をして、いつものように右の胸と脇、首筋をチェックしていただく。

「調子はどうですか」
「特に体調面の問題はありませんが、うっすらと日焼け?をしてきたような気がするのです」
「うん、そうですね。赤みが出てきましたね」

この症状は、ここ2、3日で気づいたものだ。
直に見下ろしてもよくわからないが、風呂上がりに鏡を見て、あれ?右胸が若干色づいている…?と思う程度の赤みが出ていた。
白熱灯ゆえの見間違いかとも思ったが、先生が認めてくださるなら、本当に赤いのだろう。

「今はこの程度ですが、続けていけば少し症状が進むと思われますので、軟膏を出しておきます。お風呂の後か寝る前に、赤みがある場所に薄く塗ってくださいね。症状が酷ければ1日2回ですが、今は夜1回でいいでしょう」
はい、承知しました。それと、もう少し聞いてもいいですか。
「先生、症状が進むとのことですが、薬はいつ頃まで塗る感じでしょうか」
「照射が終わって、1週間塗ってお終いですね。半分を過ぎてこの程度なら、極めて普通の症状ですよ」
「なるほど、普通ですか」
「普通です。最後まで、それほど酷くはならないと思いますね」
「であれば、ありがたいですね」

処方されたのは、デルモゾールG軟膏。化膿、炎症止めとのことだ。

風呂上がりに塗ってみた。

透明な軟膏で、少しベタベタして広げにくい。ささくれに塗るならよいだろうが、面積が広いと伸びの悪さを感じる。
適量がわからないものの、薄く、と言われていたので、右胸全体になんとなく行き渡ったかな、くらいにしておく。
そもそも、どの辺りまで赤いのかすら目視ではイマイチわからないし、まあ、適当でよしとしよう。

塗り終わって、ふと薬の表記を眺めると、「ベタメタゾン吉草酸エステル・ゲンタマイシン硫酸塩軟膏」と書いてある。
ベタメタゾン…薬局で、ステロイドだと説明を受けた気がするが、なんというか…音だけ聞くと、ベタベタして塗り拡げにくいのも納得という印象の名前だ。
ゲンタマイシン…は、抗生物質だったか。こちらについては、聞いたことがあるな、ということと、タイムマシンのアナグラムっぽいなという以上の印象はない。
なお、販売名のデルモゾールについては、悪の親玉の名前のように思う。なぜだろう…?

ともあれ、ベタベタの軟膏殿、1ヶ月足らずのお付き合いになると思うが、わたしの胸をどうぞよろしく。
わたしも、塗り忘れないよう気をつけます。