新年度、新しい上司に挨拶をしたかったが、そこそこハードな異動があったこともあり、現場が混乱状態にあることは想像に難くない。しばらく控えていたものの、3週間が過ぎ、さすがに落ち着いた頃ではないかと判断して、煎餅の缶を片手に職場を訪れた。


なお、その煎餅、いったん手を滑らせて落とす。
パーン!!といい音がした…。
これは何個か割れたな。破損品は煎餅屋のせいではなく、わたしの落ち度であることを伝えておかなくては。しかし、なぜ、こう迂闊なのか。落としちゃ駄目だろう、煎餅。もっと気をつけ給えよ、わたし…。

気を取り直して対面した新しい上司は、気の良さそうな男性だった。明るい雰囲気も好感度大。
前上司が引き継いでくれたようで、改めて事情を聞かれることはなく、自分の体を第一にするように、と言ってくださる。

よかった。
まだ始まったばかり、最終的な判断は保留だが、今のところ人間関係は悪くなさそうだ。

とはいえ、わたしが元凶の欠員と、専門知識のない異動者たち。部屋のそこかしこには、急ぎではない(が、いつかやらなければならない)業務が山積みで放置されているのが目に入る。見ないふりはできないレベルで、どこに視線をやっても山がある…。

あと1ヶ月足らずで復帰しますね、それまで待てる仕事は置いておいてください、などと話していると、同僚のひとりが、そそっと近くにいらした。

「言っておかないといけないことがあって…。5月に入ってから、復帰でしたっけ」
「そうです。5月の上旬までお休みを頂いています」
「実は私も5月に入院することになって」
「えっ」
「前に、歩き方がおかしいけど大丈夫?って言ってくれたことがあるでしょう。膝の半月板損傷で、手術をするの。リハビリもあるから、2週間くらい入院して、5月いっぱいは休むことになると思う」

そういえば、わたしが病気休暇に入る前、彼女の挙動から、なんだか足が痛そうな…?と思って、声を掛けたことがあった。
半月板損傷!?それは痛そう…。
手術、かわいそう。リハビリも大変そう。

「わたしが言うのもあれですが、どうかお大事になさってください」
「ありがとう。あなたもね」
「お互い、無理しないでいきましょう。ちょっとすれ違いになってしまいますが、お戻りを心待ちにしています」

現在の職場の皆さまは、おおよそわたしと同年代か、少し上。仲良く人生の後半戦、ガタの来るお年頃だ。
順番に何かしらの不調に見舞われるのは致し方ない。一時離脱で済めば御の字ということだろう。

欠員に次ぐ欠員で、復帰後の業務量が思いやられるところだが、なんとか労り合っていきたい所存である。