S先生とお会いするのは2度目だが、フランクな雰囲気が心地良い。私の心は既に打ち解け気味である。
今日も気安い感じで問診が始まった。

「はい、では1回目が終わったわけですが、どうでしたか」
「どうというか…どうということもありませんでした。むしろ快適?慣れてきたら、寝てしまいそうな感じがあります」
「それでいいんですよ」
いいんですか。

「何もないとは思いますけど、いちおう、照射部位の皮膚を診ますね」
「お願いします」
病衣の前を寛げて、診ていただく。あちこち押したり摘んだりして、皮膚の異常やしこりの有無を確認してくださっているようだった。
「異常なし。この手術の傷跡もね、放射線で薄くなりますから」
そうなの?
「放射線の副次的な効果として、傷跡が薄くなるっていうのがあるんですよ。僕がここの前に大学病院にいた時は、形成外科から傷跡の改善のために放射線やってくれと言われたこともあってね。本当に傷跡が薄くなって、形成の患者さんは喜んでくれるんですよね」
そうなの!?

「ちょっと脇のほうも診るから腕を上げてー」
「はい。腕がまだ上がりにくいんですよね」
「それもね、放射線当ててる間、腕を上げてるでしょ。毎日のことだから、それがリハビリになって、治療が終わる頃にはだいぶ上がるようになると思いますよ」
そうなの!!?

「放射線、いい事ずくめじゃないですか」
「そうなんだよね。副作用がほとんどなくなっちゃったんだよね」
なくなっちゃったって、アナタ…。

診察は週に1回、また来週ね、と言う先生にお礼を言って、診察室を後にする。
ここで、看護師さんに「想定される有害反応と日常生活の注意事項」が書かれた紙を手渡された。

有害反応は、前回S先生にご説明いただいた通り。
「まあ、ここに書いてある副作用が出ることは、あまりないと思いますけど、こういう可能性もあるということで」
看護師さんも、先生と同じようなことをおっしゃる。
放射線治療科の皆さまが常に楽観的なので、本当に大丈夫だという気になってきた。そもそもわたし自身が楽観的寄りの性質なものだから、相乗効果で、不安の芽は根絶やし状態である。
もういいや。無理に悪い可能性を考えることはせず、トモセラピー含め、放射線治療科の皆様の言を信じることにしよう。

日常生活の注意は、食事、入浴、活動の3点。
食事はバランスよく。水分を多めに、アルコールはやめましょう。…くっ、お酒は駄目か。日々のほんの少しのお酒は楽しみなのだが、しかたない。
入浴はぬるめのお湯で、泡洗い、押さえ拭き。手持ちの化粧水や軟膏は塗らないこと。…ふむふむ、極力、刺激を与えるなということだな。
日常の活動は今まで通りで構わないが、無理のないよう休息を取ること。下着も緩めなものを選ぶこと。…これは大丈夫そうだ。なにしろ仕事を休ませてもらっている。放射線治療と、時たま入る親と犬の介護以外、頑張ることは特にない。

説明を読み終われば、後は会計をして帰るだけである。