何の因果で好き合うもの同士が離れあうのか
盲目の少女、俺の彼女・・・だった女からメールが届いた
プラットホームを急ぐ足に絡めて、女の子の白い杖を追ってしまった
目が見えない人が白い杖を失うと、自分で移動する術を失うらしい
彼女の目的地は大学で、数日後に入学式を控えている
偶然にも俺の通う大学だった
加害者の俺は、彼女を同じ目的地へ送り、連絡先を聞いて弁償することになった、当然だ
数日後、同じ大学であることがわかったので、キャンパスで昼食をご馳走し
お金を払い、敬語を遣う者同士のさもない話をした
福祉と心理を学びたいそうだ
精神保健福祉を専攻する俺は、1年間でいくつか履修していたので
進路の相談や、今度勉強を教えることになった
翌週、駅で待ち合わせ、カフェを探す
赤いデニムが印象的だ、少し目立つことは、彼女にはわからない
DOUTORドトールでテキストを広げる
そっか、教科書読めないんだ・・・
彼女が取り出したのはブレイルメモという、視覚障害者が使うデジタルメモ帳の端末みたいなもの
多くを伺わない彼女は、俺が切り出すのを待っている
慣れない間だった、緊張する、テキストに添って概要を説明する
カチカチカチ・・・なんて速度じゃない、カチカチカチカチカチ
すごい速度でブレイルメモを打つ、健常者がペンでノートに記すよりずっと早いそうだ
それから、週に2回、一限の登校前にDOUTORに通うようになった
5時過ぎに起きて6時に家を出る生活だ
勉強した後は、他愛もないことを少しだけ話した
少しだけ・・・が少しでなくなる頃には、自分史、嗜好、夢など、何でも話すようになり
1ヶ月も経つ頃には勉強の時間がなくなった
高校生から通う、カウンセリングの勉強会へつれってった
終電を逃したから、カラオケで過ごした
放課後時間が合えば、彼女を家まで送った
彼女の家の近く、いつもの「じゃあ、また」って言う前に、彼女の足が止まる
この辺のことまだよく分からないし、近くを散歩したい
小さな公園を見つけ、彼女の気持ちに気付いた俺は
「これ以上俺に近づくと傷つけることになるよ」と、彼女を泣かした
気まずいまま、その週の放課後、未成年同士だったけど、夕飯を食べる場所に
個室のある居酒屋を選んだ
話すより、食べる時間が長い微妙な間
何時の方向に何の料理があるか、ねえ、ビールあること忘れてない?・・・あっ!!ww
サラダとか、バラバラになりやすいものを食べるには、特に最後がたいへんだ
食べさそうか?・・・いや 彼女は時間がかかっても自分で食べた
フォークから落とし続ける時の苦笑いが可愛かった
会話が弾まない空気の中、何か呑む?強いの?と促し、ウィスキーをダブルで頼むことにした
酔ってふらふらしているのか、顔も赤いのでとなりに座らせた
「すき」
告白された
彼女の気持ちは、小さな公園の時から、いや、勉強会の時から気付いていたのに
俺はもてあそぶように意地悪をし続けた
形式上、俺には他に彼女がいたからだ
返事をしないまま、家まで送らず、駅で別れた
不安だった、うまく付き合えるのか、目が見えないということは気にならなかったけど
彼女が少女のように抱いている俺への気持ちを、受け止められるだろうか
彼女と要る時が、最近の自分の最も充実している時間で、癒されるのは確かだ
その足で、付き合っていた女の駅まで移動し、呼び出した
クリスマス、可愛いという理由だけで付き合うことにした、かけ引きの大好きな「サボテンの女の子」
別れを告げられても、実感が伴わないのか、赤くなった大きな目をキョロキョロさせている
小競り合いの絶えない、賭け引きの関係、お互いに終焉は感じているだろうと思っていた
思い上がりだったのかもしれない、その時孤独でなくなっていたのは俺のほうだけだった
後談だが、その彼女にストーカーじみたことをされた
うちの前で俺を待っていたんだ、時間は24時をまわっていた
別れたはずなのに、執念にうざさを感じ、シカトしてオートロックの扉の中に入った
ピーンポーン、ピーンポーン、家族も寝てるというのに五月蠅い、迷惑甚だしい、非常識だ
怒りに満ちて彼女のもとへ下った時には、終電の無い時間で
女の子を夜中に一人にはさせられないので、カラオケで無言のまま朝を迎えた
朝焼けと始発の刻・・・彼女は俺にルーズリーフの切れ端を渡し、俺を置いて走って駅へと向かった
いろいろとごめんね、自分勝手なことしてごめんね、すきでどうしていいかわからなかった
これからもずっと一緒にいようね
大好きだよ
見た事のないほど、整った綺麗な字で書かれていた
文末には、彼女が書いた、可愛い俺と彼女が寄り添った似顔絵が描かれていた
お互い、ほっぺたがぐるぐるで、本当に可愛らしかった
彼女の姿が見えなくなった駅へ続く坂を下りながら
俺は、号泣した
ごめん、ごめんな、改めて愛おしく思った、ありがとう
さようなら・・・
彼女は、突然の別れに困惑して、まだ付き合い続けられるとおもっていたんだな
それしか、考えられなかったんだ
非道いことをしていたのは、俺だった
翌日、というよりtoday、朝日が昇った後は、眠る時間なく登校だ
目の見えない彼女とは、あの後から連絡をとっていないから、今日はいつものDOUTORへは行かない
講義中、メールを送り、待ち合わせた
彼女は、キャンパス構内のソファー、となりに座ってる
相変わらず話の切り出し方がわからない、無言、開口したのは俺だ
「付き合ってくれ、俺と付き合ってくれ」
微笑むとはまた違う、彼女の笑顔は作らない
彼女は、そんな歓びを噛みしめる表情で、小さく頷いた
初めてのハグ
その日、彼女とのはじめてのkissをした