3メガバンクの決算で、国債などの売買で上げた利益が過去最高の水準になっていると報じられた。
三菱UFJフィナンシャル・グループの2012年3月期連結決算は最終利益が前期比68・3%増の9813億円。三井住友フィナンシャルグループは9・0%増の5185億円、みずほフィナンシャルグループは17・2%増の4845億円となった。
銀行の収益を単純化すれば、預金で調達して貸し出しと有価証券運用を行い、その利ざやになる。つまり、その収益構造は、調達と運用の期間ミスマッチを除くと、低金利で景気が悪い場合、企業の資金需要が低迷するので貸し出しによる収益はさえない一方、低金利で債券価格が上昇するので債券売却益は増える。
高金利で景気が良い場合はその逆で、貸し出しで高収益になり、債券の場合には売却損が出る。
大胆にいえば、金利の上がり下がりの循環局面で債券売却益が発生しても、全体を通してみると収益はほとんどない。このため、この3月期決算発表では、今期はそれほど収益が見込めないと言ったのだ。
最近、金利が上昇すると金融機関経営が大変になって、日本経済がもたなくなるという「脅し」がはやっている。
民主党の藤井裕久税制調査会長(元財務相)も、消費税増税法案が成立しないと、金融機関の国債売りで金利が上昇するという。3月22日の参院財政金融委で白川日銀総裁も「金利2%上昇で金融機関に12・8兆円の損失」が出ると発言している。
おどろおどろしい数字であるが、金利上昇の場合の資産の損失額の計算は簡単で、保有額×平均償還年限×金利上昇幅となる。金融機関の国債保有額160兆円、金融機関の保有国債平均年限4年で2%を入れると、12・8兆円になる。
ただし、この原理がわかっていれば対策も簡単だ。金利が上昇するときは、景気が良くなっているので、債券から株式や儲かる貸し付けにすればいいし、国債の運用期間を短くすれば損が小さくなる。
また、資産と負債はB/S(貸借対照表)の左右にあるので、資産のマイナスは負債のプラスになる。つまり、資産の入れ替えや国債の運用期間を短くすれば、資産の損は負債の得とかなり相殺できるので、何も怖くない。
もし金融機関経営者が大変と言うなら、これまで金利の下げ局面で儲けてきたはずなのに、あまりに虫がいい。プロとしては情けない発言だ。もし政府関係者が大変と言うなら、国債の運用期間を短くしたりすればリスクヘッジが可能なので、金融機関を指導すべきだ。いずれにしても、このたぐいの金利上昇、金融機関破綻の話は素人向けである。責任ある人が言うようになってはおしまいだ。
むしろ、みずほコーポレート銀行は12年から、みずほ銀行と三井住友銀行は13年から納税するということに驚いた。過去の損失があったので、これまで長年納税していなかったのだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
自社株買いくらいしたらどうかね。
恥ずかしい。