震災後の日本経済
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こういう仕事をしていますとみんなが困っている時に金儲けか!
という批判をすぐされるのですが、もう慣れてます(笑)。
っつーか、実際我々の年金もこの「金儲け」がうまく機能すれば今のままでも十分還ってくるのでよ。奴ら(厚生労働省)の運用がへたくそなのでだめなだけで、
そういう議論なしに一方的に税金で補てんするという議論には全く納得いきませんぞ。
大多数の資金で国債だけ買っていたり、一律のROEで銘柄を選んで株を買っていたりで勝てる訳がないでしょう。
さて、為替については先週コメント致しました通りです。
投機筋に隙を与えない介入も今回はお見事。
実際日本は国内資金が潤沢でこれだけ日銀が低金利での流動性を保っているのでレパトリは起こり得ない国なのです。
しかし、では将来的に円安に行くのかと言われるとあまりそうも思えません。
今後復興需要、特に原発問題が大きい訳ですが、もしこれをきちんと処理するとして、
今後の日本経済の動向を見ると世界中の投機資金が日本に向かってく
る可能性はあり、です。ただ、これはいつも申し上げている通り「良い円高」であって世界中からいろいろな物を買わないと生きていけない日本にとっては必要なことなのです。
これだけ金利の低い通貨を買ってくれる・・・ということをむしろ有難いと思うべきなのかもしれません。
それは日本が今後も世界の為に価値を産み出し続けると言う確信が世界の人にあるからであって、
それは投機とは違います。世界が日本を信頼しているその結果としての円高に文句を言ってはいけません。
ただ一つ申し上げておきたいのは恐らく皆様の大多数が円資産のみをお持ちになっていて、
外貨というと南アフリカランドとかブラジルの債券になってしまう傾向がありますね。
しかし、それはやめた方がいい。
今回の震災でお分かりの通り、いざとなると日本中の資金が止まります。
今回はみずほだけでしたが、私のメインバンクもみずほなので正直振り込みができなくなって何人もの方にご迷惑をかける所でした。
日ごろから危機管理をして現金を保持していたので危機一髪助かりました。
まじで危うく倒産の引き金を引きかねない所でした。
ATMを週末に止めるなど、よくも恥ずかしくないな、と思いますが、他行から引き出すには上限があります。50万円すら集める事は不可能でしょう。
そうなるとやはりキャッシュなのです。そしてドルです。
どうせ金利は低いので運用とは呼べないとおっしゃるかたもおられますが、もう何年もドルのキャッシュをお持ちになっておいた方がいいですよ、と申し上げています。
例えば、万が一、原発事故が大きくなってから海外にお子様を逃がす時、どうなると思われますか?
今回のケースを見ていても欧州の飛行機はいの一番にどんどん成田から逃げています。
最低インチョンまでまずは辿りつく必要があるでしょう。
原発問題が大きくなっているとなると円の価値も大きく減ります。
放射線で汚染されたキャッシュを数えたい人はいないでしょう。
もっと言えばそもそも日本円で航空券が買える保証はありません。
いやな話ですがアメリカの航空会社に対して「おれはドルで決済する」とオファーしたらあなたの席が優先される可能性は大ありです。
紙切れよりましですから。カードならもちろんJCBよりアメックスでしょう。
冗談ではないのです。私はロシアでもアジア通貨危機のタイでもドルを保有していたことではるかに迅速に行動ができました。
こういう危機管理を日ごろからあまりお考えになっていない方が多いのであえて申し上げますが、世界で流通するドルキャッシュを100万円とは言いませんが20万円位手元に置いておかれるのはこういう時に最大のリスクヘッジになり得ます。
原発が爆発してからでは世界中どこでも円なぞ使えなくなるでしょう。
その時どうしますか? という究極の質問が今回出てきたようなもので、この際、正に円高の今、お手持ちの現金の一部をドルキャッシュ(トラベラーズチェックではありませんよ)に換えておくことをお勧めします。これは貴重なインフォメーションなのでブログには書きません(笑)。
そして株価。
これは今のまま行きますと東京電力次第としか言えませんね。
2日ストップ安(値幅制限400円)を続けて週末最終日にストップ高。もうふざけるなです。
先物を売りまくって安値を作り一番下がりやすい東京電力株を最後にカバーする。
先物と現物の価格差を使って投機筋(最近はゴールドマンやモルガンも平気でやりますけどね)に儲けさせるだけの話になってしまいました。
ブログでも申し上げたようにこういう公的機関でかつだれも予想できない原発事故のような事象(Force majeureとよばれ戦争などもこれに含まれます)では元来取引停止にするべきなのです。
需給だけでは適正な株価は維持できない事はみなさんもお分かりの通りでこういう銘柄は取引から外すべきなのです。
恐らく東証は海外の投資家から非難されることを恐れていると思われますが、
正々堂々とこういった主張をすれば外国人投資家も納得するしかありません。
来週も乱高下、それに連れて他の株価も行ったり来たりするでしょうが、こういった稚拙な運用しかできない東証は本当に外国人投資家から見捨てられる日が来るかもしれません。
債券に関してはどうでしょうか。
日銀がこれだけ資金供給する=国債を購入する、訳ですから金利が上がる筈がないのです。
厳しいリスクウェート規制で縛られた銀行が一般の民間の企業に融資するはずもなくその余った資金でひたすら国債を買う・・・
これが現在の日本の金融市場の状況です。
ですから私は過去10年以上日本は金利が上がらないと言い続け(逆に必ず上がると言い続けているのは某藤巻氏)今後も上がることはないと考えていたのですが、もしかすると今回はちょっと事情が変わ
るかもしれません。
復興を円滑に進めるために、東北方面への融資は銀行のリスクウェートの計算からはずす・・というような措置が取られるのであれば(私はやるべきだと思いますが)もしかすると流れが変わるかもしれないな、と少し思っています。
国債はリスクウェートがゼロというメリットがありますが、所詮1%しか稼げない資産ですからそこだけいじれば資金の流れが大幅に変わる可能性があります。
もしそういうシステミックな変更があれば・・・金利見通しを多少変える必要がありますが、現時点では不明です。通常通りであればこれまで通り金利が上がることは一切ない、ということになるでしょう。
復興債券などの発行により国債市場が需給で崩れるという専門家の顔をした「しろーと」がたくさん出て来ると思いますが全く可能性はありません。
むしろ復興専用に発行する債券ということで多少プレミアムで発行される可能性が高く、一頃の国鉄清算事業団などと同じように扱われる可能性が高いと思われます。
同じ政府保証で10BP程度プレミアムが付けば購入が殺到するというのが金融機関の運用現場の実情だ、ということを忘れてはいけません。
まとめますと
今回の震災でジャパンリスクという話がいずれ出てくるでしょう。
しかし整然と避難し略奪も起きない素晴らしい国。
どんなに混乱しても淡々とオペレーションができる中央銀行が存在する国。
一方でこんなときにシステム障害を起こす妙なメガバンクがある国。
(やはり三菱だけなのか・・・)
そして全く脳死状態の東京証券取引所を資本調達先にするという大きなリスクのある国。
政治、企業のマネージメントは全く機能していない国。
しかし何かあれば米軍が「トモダチオペレーション」で参加してくる国いろいろある訳ですね。
これらを総合してどっちに出て来るか。その結果が為替レートであり、評価が高ければ円高、低ければ円安ということです。
但し、円安に行くと言う事は基本的に日本売りです。
日本と言う国に価値を認めないということですから、半端なレベルでは済まないということを覚悟するべきです。円高は悪だ、と言い続ける日本経済新聞がその時になにを書くか、今から楽しみにしておいてください。
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エリザベス・ウォーレンの話 Elizabeth Warren
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前にエリザベス・ウォーレンの話を書いたのはいつでしたでしょうか。
オバマ政権のアドバイザーに就任して大分流れが変わる、と申し上げました。
実際大分変わってきていますが、ここに来て批判の矢面に立たされています。
まあ、共和党と徹底的に戦う姿勢が前面に出ているから当然ではあるのですが
・・・
彼女が斬新な所はアメリカの中流層の崩壊の原因を所謂ダブルインカムにある
・・・と斬った所にあります。
要するに女性は別に働きたくて働いている訳ではなく、経済的事情によって仕
方なく働いている家計が殆どなのだ・・・アメリカでこの議論は相当危うい・
・・と数字を示して見せた事です。
更に結局アメリカの家計は1980年代からこのダブルインカムを前提に借金
をした・・・簡単に言うと二人の稼ぎを常に前提にして住宅ローンや消費ロー
ンを組んで借金をして消費をしてきた・・・ことこそが今回の金融危機の根本
的な問題だと言い始めた最初の学者なのです。
そして更にアグレッシブなのはそのアメリカの中流家計がその借金地獄を自ら
の子供たちに再生産していると言う事実・・・つまり子供の教育の為に更に借
金を積み重ね、多くのケースはその返済の一部を学生ローンの形で子供に負わ
せ、しかもこの学生ローンは自己破産しても逃れられない代物だ・・という社
会問題をも指摘している点です。
当然彼女はまず学生ローン(サリーメイなどの公的ローン)については少なく
とも自己破産した場合は返済義務をのがれる事を政権に提案していますし、病
気など返済不能になった場合はそれは政府が肩代わりする、ということも提案
しています。ある種当たり前、と言えなくもないのですが・・・
これが共和党から攻撃にさらされている訳です。そんなものは自己責任だろ、
と。
払えないならそんないい大学にいかなければいい。高卒のまま道路工事でもや
ってろ・・・・というのが彼らの主張です。(アメリカではいい大学というの
はものすごく学費が高いのです。ハーバード大学などのアイビーリーグですと
もろもろを入れると年間1000万円位は覚悟する必要があるでしょう。日本
は東大が一番安いのですからとても恵まれているのですよ)
これについてクルーグマンがこんなコメントを出しています。
Noceraというのが今回ウォーレンを非難した先鋒です。
As Nocera points out, this attack needs to be seen in the context of the
GOP attempt to undermine any and all financial reform. And the GOP
has it in especially for anyone who got it right: since they’re trying
to sell a narrative in which the financial crisis was somehow generated
by too much government intervention, not too little, and the bankers
were just helpless victims, they especially need to demonize the people
who called the actual route to ruin as it was happening.
抄訳
Noceraの一連の批判は共和党がそもそも今回の金融危機が政府による過剰な介
入が引き起こしたものであるという論法に従って(そって)為されている。そ
して金融機関はそのための「犠牲者」だとも言っている訳であり、その意味で
(政府による弱者救済などはもってのほかだ)共和党の主張をサポートしてい
ることになる。
ということで、これ以上こういった弱者救済に政府が介入するべきではない、
という論法でウォーレンを攻撃し始めています。
我々から見ると明らかにウォーレンが正論のように見えますが、特に共和党が
主導をとった議会では必ずしもそうではないということに注意してください。
このテーマは今後アメリカ経済にも大きな影響を及ぼすので、一般的なジャー
ナリストは報道しようもないのですが、こちらの読者は彼女(ウォーレン氏)
に是非注目して頂きたいと思います。彼女のアイデアに今後のオバマ政権の命
運がかかっていると言っても過言ではありません。
Elizabeth Warren “The Two-Income Trap” を参照
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あとがき
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今週のアエラの見出しが「放射能が来る!」となっていまして、こんなアジテ
ーションのある雑誌に連載をしているあなたはどうなのよ、という読者からの
コメントがブログにありました。本当に読者かどうかも確かめていないのです
が、私は雑誌編集に関わっている訳でもありませんし、実際にどういう方針で
編集しているかも口をはさめる立場でもないのです。
ただ、テレビ出演をCS、生放送以外見送っているのは民放の彼らが勝手に僕
の発言をカットし、言ってもいないことを勝手に報道するからであり、新聞(
端的に日経ですが)のインタビューも滅多に受けないのは人の発言を理解もし
ないで、勝手に内容を変えて書かれるからです。(そういう人は業界の主要人
物にたくさんおりまして、自ら日経新聞はインタビューをほいほい受けるテキ
トーな奴しか取材相手にならないので内容が滅茶苦茶になります。因みに日経
にも一人だけ私が評価している記者さんがおりましてその方の取材は受けてい
ます。)
英文の報道機関ではそういうことがないのでしっかり答えています。
アエラの連載もそれと同じ事で約3年間書いてきましたが、この内容はやめて
くれ、と言われた事は一度もありません。誤字脱字、内容ミスについては直し
て頂いておりますが、主旨そのもの・・・東証はばかだ、日本の経営者はなっ
てない、日本の証券会社は最悪だ・・・など相当スポンサーの機嫌を損なうよ
うな発言でも内容を直される事は一切ありませんでした。
その意味ではアエラは極めて信頼できる雑誌の一つだと思います。
私、そして並べるのもおこがましいですが、高村薫さん、姜 尚中さん、すべ
て直しなしで原稿を出されています。週刊文春ですら内容を見てボツにすると
いうのですから日本の言論統制もすさまじいものがありまして、その点アエラ
はそういう問題に直面した事がない、数少ない雑誌です。ちゃらく見えますが
その点ではSPAも立派なものだと思っています。人の原稿をもらい、話を聞
きながら内容が気に入らない(主旨にあわない)とボツにするというのが日本
の報道の現実なのです。
そうやって統制されまくった記事を皆さんが御読みになっているということを
申し上げたい。今回の原発事故で大分お分かりになったのではないですか?
その点アエラは立派な姿勢を貫いているし(本社である朝日新聞との確執はそ
れはすさまじいものがある・・・・ようだ)彼らのプライドを見る思いがしま
す。
ですから私はアエラに書いています。まあ、むこうからもういいよ、と言われ
る可能性は高いのですが(笑)、必要ない、と言われるまで書いていこうと思
っている次第です。記者、編集に携わる諸君もよく存じ上げておりますが、大
変立派な皆様で、ここで改めて信頼できる雑誌の一つです、ということを申し
上げておきたいと思います。
まあ、それでもアエラに書けない事をこちらで書く訳ですから、有料メルマガ
の価値がある、ということになりますか、最後は宣伝でした!
では皆様も健康には十分注意されてください。
そして東北を中心とした被災地の皆様、引き続き心よりお見舞い申し上げます。
何の役にも立たないかもしれませんが、わたくしの心は常に皆様と共にござい
ます。