2011年世界経済を左右するファクターベスト8 | ブー子のブログ

ブー子のブログ

損したらどうしよう、と思ったら、やめればいい。
それはやりたくないことだから。

損してもいい、と思ったら、やればいい。
それはやりたいことだから。

2011年世界経済を左右するファクターベスト8
***************************
さて、今年2010年の10大ニュースは今週のSPAに譲る事に致しまして、
本年最後のメルマガは来年を見つめまして、来年の世界経済を左右する8大・
重大ファクター(10大にしたかったのですが見つかりませんでしたね・・・
笑)をざっと整理しておきましょう。これは物事を見る上での大きな枠組みの
ようなもので、1年間を通じて双眼鏡代わりにこれらをベースに様々な事象に
アプローチして頂くのにお役にたてるかな、と思いつつ書いております。自ら
影響力の大きなアメリカから見た視点が中心となります。
まず、そのアメリカの全体像、ラフスケッチから。
何と言っても2012年大統領選挙を迎えるアメリカ。オバマ政権最後の年と
なります。もちろん再選を狙う事もあり、通常はもう来年の夏くらいから選挙
モードに入ってしまうため、実際の重大な政策決定は時間を区切られる訳です。
夏までに雇用を含め回復モードに入らないと中間選挙の結果を見てもオバマ大
統領は相当苦しくなるでしょう。

一方ここにきて「ブッシュ減税」の丸のみなどでもわかるようにオバマ大統領
は議会政策を大幅転換。共和党に相当譲歩することでなんとか成果を出そうと
必死です。なりふり構っていませんし、必要なものは何でも取り入れる貪欲さ
が目立ってきました。このコンテクストでいうとこれまでどっちつかずできた
財政再建という話が来年は一気に表面化しそうです。これまでの財政投入+Q
E2による垂れ流し緩和、のモードから一気にシフトチェンジする可能性は十
分あります。これは日本も含め世界に与える影響は少なくありません。まず、
アメリカの政治動向によるアメリカ経済政策のシフトチェンジがあるかないか、
というのが来年の最大のテーマと言っても過言ではなく、これが底流に流れて
いるということをここしばらく忘れないでいたいと思います。共和党対策(特
にティーパーティー対策)を含め年初の予算教書でかなり具体的な財政再建案
を提示することになるのではないでしょうか。(一連のドル安政策が雇用など
に期待したほどの成果を上げないどころか、様々な軋轢を産み出してしまった
のもオバマ政権にとっては誤算だったかもしれません。ドル安はやはりプラス
にならないという声も政権内からも聞こえてくるようになりました。)

ということで一つずつ拾っていきましょう

1.アメリカ住宅市場
今回のアメリカ景気低迷の諸悪の根源であり、ここが回復しない限りアメリカ
の再生はあり得ません。セミナーの時も申し上げましたが悪いと言っても通常
「限度」があるのですが、人口が増え続けGDPが曲がりなりにもプラス成長
を続けるアメリカで住宅着工の件数が1960年代と同じというのは「しゃれ」
ではすみません。アメリカ経済史上見た事のない大事件です。

直近発表された11月住宅販売も「壊滅状態」と言ってよく、新築販売と中古
販売のギャップも歴史上見たこともないようなギャップになっています。(グ
ラフをブログに貼っておきます)。差押えた中古住宅が売れず、在庫として積
み上がっていること、タックスクレジット以外でのローンによる購入が事実上
不可能になりつつあること(ローンが付かない)から、住宅市場の活性化は道
のりが長い、とみられます。

週末のWSJは既に600万戸以上の住宅が在庫として市場に積み上がってお
り、所謂バーゲンをしても銀行のローンが付かない為に市場が動かない、とい
う状況だとレポート。更に差押え物件の3分の1は所謂「二次破産」によるも
のだという資料もあり、銀行の融資は益々厳格化しつつあると報道しています。
(ここでいう二次破産というのは破産して差し押さえられた物件を買った人が
また破綻して差押えを受けてしまうという意味です。要するに新たな取得者が
購入した時点である意味現在の値段に一度「値洗い」されているのでそれでロ
ーン審査に通るような人が更に破産するということは余程住宅価格が下落して
いるか、その後ローン購入者が失業などによってローンが払えなくなった、と
いうことを意味しているので重大です。) 
また、所謂ネガティブエクイティーも問題になっており、およそ2500万人
が既にネガティブになっておりそのうち250万人は5%程度のエクイティー
(つまり95%やられている)になっているとも報道しています。

住宅価格自体も低迷が続いていて、ケースシラーによれば新築住宅価格はここ
4カ月平均(メジアン)で30%も下落しており、中古住宅のそれも20%以
上の下落となっており、年後半、特にここ数カ月、更なる価格下落が加速され
ていることが確認されています。(個人消費が年末で回復などと報道している
所も多いのですが、この住宅価格の年末にかけての大幅下落については殆ど報
道されていません)。
アメリカ住宅市場は回復どころか更なる困難に直面しつつあると言ってもいい
くらいです。

2.アメリカの成長率(GDP)
アメリカではGDP自体は引き続きプラスに推移します。それは来年も変わら
ないでしょう。だからといって雇用などが増えないという構造も変わりません
が・・・因みにゴールドマンはGDP見通しを上方修正しました。実質GDP
で2011年3.4%、2012年3.8%としています。(それぞれ2.7
%、3.6%から修正)
この数字の見方にはあまり反論はありません。GDPそのものが回復してもア
メリカ経済の様々な問題点は解決する事がないのです。

3.アメリカの雇用
まあ、その代表例が雇用です。これについてはこれまでも散々書いた通りです。
雇用数そのものの減少、所謂U6の増加、正社員からパートタイムへの転換、
失業の長期化(26週以上)などなど。来年も雇用が良くなる兆しはどこにも
ありません。今年1年の月間平均の雇用数は87000人となっていますが、
アメリカの月間平均雇用数は戦後を通しておよそ15万人と言われてきました。
また、失業率を悪化させないために最低必要な雇用数は月間12万5千人と言
われています。
更に戦後失業率が9%を超え続けたのは1980年代の最長で19カ月なので
すが、今月の失業率で間違いなく記録更新でしょう。完全に「新しい時代」と
言えます。賃金そのものの下落も気になる所ですし、正社員からパートタイム
への転換増もかなり深刻です。

4.アメリカ地方政府の破たん懸念
昨年からカリフォルニアがごたごたしていましたが、年末にかけてアムバック
の倒産を契機に一気に表面化。現実的にデフォルトとされた地方債はまだあり
ませんし、CDSもポルトガル、スペイン国債などよりはるかに低いので現状
平静を保っているように見えます。しかし、オバマ大統領によると直接救済は
しないと仄めかしており、共和党主導の議会で地方政府救済案は通ることはか
なり難しい。
また、先ほどのGDP予測にも関わることですが、これら地方政府の支出額は
意外に大きく、個人消費に次ぐ2番目に大きなシェアを占めているのです。従
って地方財政の逼迫による需要削減は経済全体意外なインパクトを及ぼすかも
しれません。

また、既にお伝えしているように、学校が週に2日しかない、であるとか警察
の人員カットなど、社会生活に必須なインフラまで手を付け始めている州もあ
り、これらが社会問題化すれば大統領選どころではありません。

5.欧州危機
ポルトガル、アイルランドなどCDSのスプレッドは800BPを超えており、
最早事実上破綻していると言われても仕方ないレベルです。WSJ、FTなど
欧米の報道では既に「ゲームオーバー」という表現まで出てきました。
実際週末の10年国債利回りはギリシア12.1%、アイルランド9.01%、
ポルトガル6.1%、スペイン5.47%(因みにドイツ国債は2.97%)
となっており、ブラッセルでユーロ各国が顔を合わせた効果もなく、いずれも
レコードハイの利回りに近い所まで上がってきてしまいました。
アイルランドの次と言われるスペインでは既に失業率は20%、不動産価格の
下落でやはり金融機関が相当の被害を受けており地方金融機関の破綻は間近と
言われています。(いずれの国の破綻もスタートは金融機関から始まる・・・
ことを忘れないでください!)

結局「もしかすると」、のレベルではなく、「いつ起きるか」の問題だと言っ
ていいと思います。つまり、ユーロという関係をブレークするか、このまま続
けるかの選択ですね。ブレークする場合はドイツが離脱するか、倒産しそうな
これらのPIGSを切り離して早くIMF送りにしてしまうかどうか。
もしこのままだらだら行くとすると、そのコストを誰が払うかと言う問題にな
ります。つまり、財政削減によるデフレ、増税による負担を容認して年金、賃
金などの下落などを通じ欧州の労働者が負担するのか。あるいはそれらの負担
を国債の「棒引き」という形でクレジット保有者(おもに欧米の銀行)に負担
させるのか、どちらかになってしまう訳でさもなくばユーロそのものが壊滅で
す。
当然このまま続けるという選択は難しく、その場合は通貨だけではなく、財政
もユーロ全体で「統一」しないと難しいだろう、と言う学者もかなり増えてき
ました。
ですからどちらにするのか早急に決断を迫られているというのが現在の冷静な
分析で、少なくともこのレベルに国債の利回りがあると言う事は市場がその当
たりまで見ている、ということでしょう。

これは現在ギリシア、アイルランドで行われている事・・つまり民間債務を単
に政府債務に置き換えても物事は解決しない、ことを市場が知っている訳です。
あのブレディ・プランを発動したラテンアメリカ危機もある意味アジア危機も
結局債務の付け替えでは収まらず、最終的に借金を踏み倒して、更にIMFや
日本が様々な保証を付けることで初めて国の信用が立ち直った事を市場は覚え
ていて、今のような「パッチワーク」を続けても解決にならないということは
もう大分授業料を払って学んでいることです。
結局大不況のあと戦争を引き起こしたドイツがまた今回のユーロ崩壊の引き金
を引く事になる、などという有難くない「予想」まで出てきており、事実上欧
州リスクといいつつも投資家から見ると実は最終的にはドイツリスクでもある
・・・という見方もできるかもしれません。ラテンアメリカの経済危機におけ
るアメリカ、アジア通貨危機における日本の役割がドイツに求められている、
と言ったらわかりやすいでしょうか。そしてその当事者のドイツは責任を取り
たくないと言っています。

6.アメリカのインフレーション
何度も出ては消えているのですが、また最近アメリカはインフレになるのでは
ないか、という議論が盛んに起きています。
過去2年間にもFRBの緩和政策の度にインフレになるという議論が繰り返し
出てきたことは記憶に新しいですね。もう何十回も言われていて、そのたびに
「もうすぐそこまで来ている」と言い続けて2年間です。今回は中国のインフ
レが飛び火するという論旨記事も良く見ますね。
果たして本当の所はどうなんでしょうか。
先日メルマガで取り上げた通り、CPI(インフレ率)そのもので見るとイン
フレ率が上がっている形跡は皆無です。コア、名目いずれも1%台でFRBの
ターゲットである2%を下回っている。あとは期待インフレ率の問題がありま
すが、90ドルを再び越えてきた原油などを見て、中国の影響と見るのかどう
か、でしょうが、コアでも下がっているのでこれら原油にインフレの原因を求
めるのは乱暴でしょう。

7.アメリカのマネタリーポリシー(QE2)
これは今までお話ししてきた2のGDP、3の雇用、そして6のインフレなど
が絡みますので単独でお話しするのが難しいイッシューです。但し我々が注目
するべきポイントとしては、FRBはこれ以上QE2を拡大するのか、(つま
りバランスシートを拡大して様々な物を買い続けるのか・・・すでに6月まで
に600BILドルの購入を決めている)、或いはいつどこの時点でFFを上
げるのか、という事に集約されるでしょう。
QE2は実際株価をここまで押し上げてきたという重大な成果がある訳でその
意味で株式投資家にとってこの600BILは大事な「原資」になります。世
界中の連銀でこれだけ株を買っているのはFRBだけですから。

もちろん、出てくる経済統計の数字に左右される話ではありますが、6月まで
はこのままいく事になるでしょう。我々の注目はあくまでもその後FRBはど
うするのかということが基本的なイッシューです。(万が一あまりにもいい数
字がでればその前に停止する可能性もないとは言えません。可能性は限りなく
低いですが。)
また、その前に既にこれまで2兆ドル近く買いこんできたアセットの中で償還
を迎えた金額を再投資するのかどうか、ということも注目する必要があります。

バーナンキ自身は11月のインタビューの中で 連銀の今の義務はDual Mandate
だと言っています。それは雇用を増やすことと、低インフレを維持することだ、
ということです。
The Federal Reserve's objectives - its dual mandate, set by Congress -
are to promote a high level of employment and low, stable inflation.

更にバーナンキは不幸な事に失業率は引き続き高く、インフレ率は低くうまく
コントロールされているとコメントしており、そうなると当面の政策変化は極
めて予想しにくいということになります。

失業率がコンスタントに8%を下回る、或いはインフレ率が連銀目標を上回り
3%で推移するなどの事がない限りこの政策は続くでしょう。大事なポイント
は大多数のエコノミストが連銀のエグジットはインフレ率次第だと発言してい
るのですが、バーナンキ自身の言葉で「失業率も見る」はっきり言っているの
でこの両方を見なければいけない、ということ。これは明確です。
そして何かがあるとするとFF金利を上げる、QE2をやめる、のいずれにも
先んじて再投資を停止するという選択肢を最初に選好する筈です。そのあとF
Fを上げ、最後にアセットを売り始めることになります。ですから、当面連銀
のバランスシートの推移に注目してアセットの出入りをチェックするという作
業が最も必要な仕事になるでしょう。まあ、売り始めるには相当時間がかかる
と見ていいと思いますが・・・それまでドルが持つかどうか、という議論もま
た別にあります。

8.中国(或いは中国経済)の行方
中国政府が必死で価格統制に入っているように中国の場合経済そのものが過熱
しているという材料には事欠きません。
インフレ率も中国政府のターゲットをはるかに超え、労働賃金上昇率も生産性
上昇率をはるかに超えています。更に中国の場合統計が正しいかどうかという
疑問は常にあるのですが、長期固定設備投資額は何とGDPの40%にも達し
ています。労働人口の減少もどうも我々の予測よりはるか早く始まりそうです。
(だとすると2015年以前に起きると言う事になる!)
そして少しずつ表面化し始めた不良債権問題。中国の銀行のアセットの50%
近くは我々の基準で言えば不良債権だと言われています。これらの問題を早け
れば2012年中に認識させられることになる訳で、これはやはり相当覚悟が
必要でしょう。

世界的に中国が起こしている軋轢も過小評価はしない方がいいと思います。(
ノーベル平和賞、尖閣問題も含む)。あまり知られていませんが、特に原油、
資源の確保で大量に資金を投じたアフリカ諸国からはその悪辣な「高利貸し振
り」が非難されていて、そこにこういう問題が起きたものですから、大きな「
中国離れ」が起きつつあります。著作権などの所謂権利問題も言うまでもない
ことですが、いずれにせよこれまでの高成長国では起こすはずのない問題を中
国は起こしつつある・・・つまり相手のルールを踏みにじる・・・と言う点は
重要だと思います。(商売の世界は信用第一で、こういう問題はすぐ評判が広
まってしまいます)

これまでの基準では捉えられない経済大国の出現ということです。

一方為替水準の自由化より先に元そのものの海外への流通自由化が先に起きる
気配があります。「走出去政策」と呼ばれており来年には香港のオフショア市
場に対しては無制限に元を持ち出して良い、ということになりそうです。そう
なると香港から先は既に自由自在ですから相当なお金が世界に向かう事になり
ます。これは「革命的」なことかもしれません。例えば香港にあるサンフンカ
イ(新鴻基地産発展有限公司)という不動産会社は既に世界最大の不動産会社
で時価総額を見ると三菱地所と三井不動産を足してどっこい位の規模な訳です。
ここに中国マネーがどんどん流入してきたら・・・ということですね。極めて
「中国的」なマネーが世界中に増えて来るとこれまで我々が信用していたルー
ルの枠組みが根幹から変わってしまうかもしれません。