[北浜 流一郎先生の株式コラム 11月18日号]
ドル安円高打ち止めで正気取り戻した東京市場。高値掴みリスクも高くなってきた。
東京市場が正気を取り戻しつつあるようです。10月まではまさに失神状態。世界各国市場が堅調な動きになっている中で、東京市場は下げ続けました。
ところが11月に入り、まさに様変わりの動きです。この原稿を書いている時点で日経平均は1万円の大台にあと7円ほどのところまで迫りました。タッチ寸前というところです。
何が起きたのか。特別なことが起きたわけではありません。韓国で開催されたG20では為替の引き下げ競争を止めようじゃないか。こんなことが話し合われたものの、具体的な方策は決まりませんでした。
当然です。先進諸国と新興諸国との利害は180度異なるからです。ところが円はこのところ下落基調です。G20での話し合いや日銀の金融政策転換などの効果があらわれたと見たいところです。
しかし、そうではないと私は考えています。それらも効果ゼロではなく、多少プラスに働いてはいるでしょう。しかし本質的な要因は他にあります。米国の雇用情勢に改善の兆しが見えている。この点です。
毎週木曜日に発表される失業保険申請件数。これにそれが現れています。このところ明らかに改善中なのです。先週は前週に比較して2万4000件の減少でした。
失業保険を申請する人が減少するのは当然新たな職を得たからと見てよいでしょう。そうなるのは企業、公共組織などに雇用を増やす余裕が出来てきたことを意味し、為替市場もそれを評価します。米国ならドルの評価が高くなります。
現在のドル高は、このように雇用増が背景にありますので、その改善が続く限りドルも上昇基調で推移する。こう見てよいでしょう。それは円安要因でもあり、株高要因ともなってくれます。
もちろんスムースにこのシナリオが実現するとは限りません。しかしドルの一方的な下落には歯止めがかかりつつあるといえます。すでに米国では雇用に改善が見られることを理由に、金融緩和の規模を縮小すべきだという声も出始めているほどです。
一方でユーロ圏の財政危機問題が再びクローズアップされつつあります。アイルランドの財政問題が深刻化しているというのです。それはユーロからの資金流出を促し、ドルへの流入となります。これまたドル高円安要因であり、東京市場にとってユーロの財政危機もプラスに働く状況となって来ています。
さらに付け加えるなら、ここに来ての銀行株の急騰。これまた根幹を探るとユーロ圏の財政危機に行き着きます。金融機関の経営が危ないため、資本増強を促すわけにいかない状態にあることから、日本の大手行も当面資本増強のための公募増資を行わずにすむというわけです。
このように現在の東京市場にはユーロ圏の財政危機がプラスに働いている格好で、何とも妙なことになっていますが、上昇要因があるのは好ましいこと。急騰を追いかけ買いするのはリスクが高過ぎますが、一服局面は狙いたいところです。
で、注目銘柄です。まずは関東電化(4047 東1 1000株)です。この株はこのところ軟調です。11月12日発表された今期収益予想が下方修正されたことが原因です。しかし、リチウムイオン電池用電解質の需要は好調です。
それでも収益が下方修正されたのは、株式評価損を出したからです。本業に直接関わるような減益要因ではないため、株価は今後蘇生が見込めます。
続いてTHK(6481 東1 100株)です。直動案内機器類で世界シェアの60%を制する首位企業です。機器類が直動するようにベアリングを使う機器で、半導体、工作機械用に使われています。
中国、韓国向け輸出が好調で増収増益ながら、株価はこのところ調整色を強めています。韓国、中国が利上げを実施したことで収益が落ちるのではと案じてのことでしょう。
しかし中韓の経済発展はまだまだ続きます。株価は下げている時に拾いたいものです。
最後に愛知製鋼(5482 東1 1000株)です。この株はこのところ上昇続き。かなりリスクが高くなっていますので、そのつもりで取り組みたい銘柄になります。
なぜそんなに上がるのか。自動車用特殊鋼のメーカーであり、トヨタ向けが主なのですが、この会社が手がける特殊鋼の一つに磁石があります。
いわゆる強力磁石に強いのです。そして、それはプリウスのモーターに使われているのですが、レアアースが入っています。それにより磁石の強度が増すのです。
ところで中国との間でレアアースの輸入問題がありました。いまは改善されつつあるようですが、将来また同じことが起きることが考えられます。
そこでこの会社が取り組んだのがレアアースを使わない磁石の開発。それに成功、来週から量産の予定です。それを評価しての株高ですが、目先は正直、高くなり過ぎです。少し調整を待っての出動をお勧めします。