奥秩父の岩屋で仙人気分 | 写真小話

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私が撮影しながら散歩した備忘録的な記録

2021.07.22-23

奥秩父、国師ヶ岳の稜線近くに人が数人泊まれるほど大きな岩屋がある。

かつて(30年以上前)の地図には岩屋林道という登山道があり、北麓の川上村から梓川(※上高地を流れている川とは別物)に沿って件の岩屋を通過し国師ヶ岳に至っていた。

当時から難路指定されていたが、現在では廃道となり登山道の記載はなくなって、もともと利用する人も稀だった所が、マジな篤志家のみ訪れる場所になってしまった。

いつか訪れてみたい思いはあったが、当時は大場所ばかりに目移りして実際行くことはなかった。

岩屋林道は廃道になっても、梓川の沢登りと思えば沢登り的な難所もなく一人沢歩きにはちょうど良い感じ、そして静かな岩屋で一夜を明かせば素敵な山旅になりそうだ。

すっかり忘れてたけど、せっかく思い出した事だし積年の思い?を果たしにちょっと行ってみるか。

 

ちょっと行ってみるかなんて言ってはみたものの、梓川は日本海に注ぐ信濃川-千曲川の源流部で長野側にありアプローチがちょっと遠いのだ!

千曲川と梓川の合流地点からの梓川、ここら川上村は高原野菜の産地で山梨側から信州峠を越えて広大なレタス畑を通過して行く。

道中が長くてツーリング気分が盛り上がってしまって山に登るのが面倒くさくなってきた。

梓川の林道脇にバイクを止めて遡行開始。

遡行開始付近の梓川

小さな堰堤をいくつか越えて進む

梓川は深い森の中をながれているけど、梓川を囲む山々が険しくないせいかどこか明るくいかにも高原の清流といった風情がある。

奥秩父の沢と言うと深く暗いゴルジュにヌルヌルの江戸むらさきの様なコケの生えたいやらしいナメ滝や大滝が連発するしょっぱい沢のイメージが強いけど、ここは優しい沢で特別な感じ。

いいね、この雰囲気

ちょこちょこ明るいナメ滝が登場するけど簡単に越えられるものばかりで助かる。

しょっぱいのは勘弁です。

東沢出合い、右が梓川

 

時折現れる堰堤の上に小さな堰堤湖ができていたりする

この堰堤の上に堰堤湖があった。

堰堤は嫌いだけど、これは良い雰囲気。

 

かつての岩屋林道は途中まで車が通れるような林道だった様で、時折その痕跡が散見される。

ふと広い道状の所にでると作業小屋の廃屋登場

屋根の上に豪快に木がブッ倒れてます。

朽ちた橋の橋脚

まもなく、こんなものも跡かたもなく流されてしまうでしょう。

作業小屋の廃屋もう一丁発見、こちらにも豪快に木がブッ倒れてめり込んでます。

小屋内部、何かが生息していた痕跡なし。

廃屋を過ぎたあたりから、沢には倒木が増えてきて遡行時間がかさんできた。

おまけに空がゴロゴロ鳴り出し、ポツポツ降ってきやがった。

沢通しで進むには時間がかかりすぎて、岩屋の到着が遅くなるかも、ちと、ゆっくりしすぎたな。

雨もいつの間にか土砂降りとなり、雨具着るのが面倒くさくてそのまま歩いていたらビショ濡れになってしまった。

ヤバいな、このまま2000mの岩屋でビバークしたら寒くて寝られやしないよ。

速度を速める為、旧岩屋林道の踏み跡を可能な限り拾って上流へ。

いつしか、流れも細くなり標高的にそろそろ岩屋だよなって所で…

おおっ、岩屋!

でも小さっ、これじゃないよね、と裏に回ったら…

これこれ!岩屋登場です!

辺りは雨で濡れているけど岩屋の中は乾燥しています。

かつてここで一夜を明かした人が残置したマッチなんかが置いてありました。

奥に古代人の壁画でもあれば雰囲気だけど、もちろんそんなものはありません。

 

濡れた枯柴でなんとか焚火して、濡れた体を乾かした(3時間くらい掛かったけど…)。

体が乾いて一安心、袋詰めラーメンをこしらえて食した後、やる事もないのでチーカマかじりながら酒を飲んでぐにゃぐにゃしてたら、どうしようもなく眠くなり、この日はフィニッシュ。

 

翌日…

未明に目覚めて、明るくなると同時に出発がセオリーだけど、寝坊した。

すっかり明るくなり、この谷間に日が差すころ目が覚めた。

でも…

辺りがひかり輝いていてなんとも美しい…

でも、寝坊したのでそそくさと飯を喰ってとっとと出発!

さらば岩屋

 

岩屋林道の残骸ふみ跡を拾いながら国師ヶ岳を目指す。

踏み跡はやがて不明瞭になり目印も見当たらなくなったあたりで国師ヶ岳から北に延びる尾根を目指して登る事にした。

森林内の登りは、まぁ普通に登れたけど、尾根筋が近づいてくるとシャクナゲとハイマツの密藪になり苦労する。

尾根筋に出て国師ヶ岳方面を望む。

反対側の信州方面、小川山屋根岩も見えてます。

久しぶりのシャクナゲ藪漕ぎ、んもう全然進みません!時速100mくらい、足が地面につかない程の藪漕ぎ、、マジで堪えます。

藪漕ぎを続けていると、時に岩屋林道の踏み跡と合流したりロストしたりしてきて、次第に踏み跡の目印が多くなってきて、おっ、こりゃ近いなと思っていると。

画像左の人は無関係です。

ひょっこりと国師ヶ岳到着、一般登山道と合流です。

山頂でつぶれた菓子パンをかじって、国師ヶ岳を後にし、甲武信岳方面に進みます。

しばし2500mアンダーの稜線散歩。

シャクナゲがまだ所々咲いていて目を楽しませてくれる。

沢の途中や、藪漕ぎ中も咲いてたけど精神的に余裕がありませんでした。

 

東梓を過ぎて北に進み東側に道が折れてすぐの鞍部から登山道を離れ北の沢系へダイブ!

すげぇ倒木だなと思っていたら、チェーンソーでカットされたものでした。

何のために?どっかの山小屋で燃料にするのかな?

そんな沢系を下って行くと次第にガラガラの涸沢になる。

まるで土石流跡の様な沢筋、実際に最近起こった土石流跡だろうな。

なおも下って行くとさらなる土石流沢と合流。

右の崩れ方が浅い沢を下ってきました。

さらにガラガラを下っていくとようやく普通の沢らしい本流的な流れと合流、本流は合流地点の上でナメ滝になってます。

下降にあたり、ヤバい滝が無い事は調査済みです。

不用意に沢を下降する様なバカはしません。

まぁ下降に悪場がないのは何よりですが、読み切れなかったのが堰堤です。

1箇所あるのは確認していたのですが、実際は3箇所ありました。

う~んどうやって降りようか…

でも3箇所ともロープを出すまでもなく簡単に降りられたんだけどね。

3つ目の堰堤下あたりで、高度的にはそろそろ廃林道の終点近くのはず。

それらしい地形を見つけたので這い上がってみると…

おおう!ドンピシャで廃林道終点着!

ここで靴を履き替え、ペチャンコになったパンを齧りながらひと休みして、廃林道下り開始。

廃林道なので、側壁の崩れもほったらかし…

道自体も崩落して擁壁が宙に浮いていたりして…

でも次第に状態がよくなり、現役で使える感じになってきて。

林道なれども気分が良い道。

そんな道を快調に下っていると、プラスティックの筒が墓の塔婆の様に林立する場所に出た。

何かと思ったら、木を植えるイベントか何かの跡地でした。

でもここのは、植えた木が1本も育ってません、ただただプラのゴミがあるだけ、全部で数百あったのではないだろうか…

ハイカーの入らない林道とか歩いていると、まぁまぁの確立でこういう植林イベントの跡を見る事があるけど、大体が荒地に戻ってますよね、育ってる木も数本あるよねって程度で…

ここのは全滅だからより酷いけど、せっかくお金かけてやるのだから、エエカッコだけでなくどうせその後ほったらかすのを加味した上でそこそこの成果が出るように木の種類とかを考えたら如何だろうかと思う。

なんて、最後にモヤモヤ思いながら歩いていると…

おう、愛車登場!

 

おしまい